労災の休業補償給付の取り扱い

10年以上、社会保険労務士として色々な労災事故の手続きをして、「労災処理なら慣れたものだ・・・」とばかり思っていました。こういうのを「知っているつもり」というンですネ!!

一般的に、労災事故による休業中は労災保険から休業補償給付(平均賃金の8割)が本人に支給されます。そして、もし会社がその間に賃金(給与)を支払うと、休業補償給付が減額されてしまうことを知っている人は多いと思います。専門学校でもそのように教えています。

今回、私が労基署の職員から教えてもらったのは、休業中に賃金(給与)ではなく休業補償を会社が支払ったのであれば労災保険からの休業補償給付は減額されず、労災保険からの休業補償給付が会社に支払われるということです。要するに労災保険から休業補償給付が支給される前に、会社が本人に立替払いをしたので、立て替えた会社に労災保険から休業補償給付が支給されるのです。

労災事故で入院等をすると、思わぬ出費があるものです。ただでさえ入院して不安になっているところに金銭的な不安が重なってしまいます。しかも、労災からの休業補償給付が支給されるには、労基署での審査等があるため日数がかかるのです。その為、入院した従業員にしてみれば、通常通り会社から銀行口座に振込みがあると家族のことも安心することが出来ます。

今回お手伝いした会社は非常に人道的かつ家族的な考えを持たれている大企業さんで、労災事故で休業している従業員には、休業開始から2カ月間は「通常支払う賃金を全額支払う」という規則がありました。この場合は「賃金」として支払われましたから労災保険からの休業補償給付は全額支給停止となります。そのため、労基署の担当官がくどい様に「賃金を支払ったのであり、休業補償ではないですよネ?」と訊いてきました。持参した賃金台帳に基本給やその他諸手当等が区分して記載されていましたから、賃金ではなく休業補償ですと言い切るには余りにも無理がありました。

そこで早速、今後に備えて会社の規則を変更することにしました。そうすれば会社負担は約2割で済むようになります。

尚、この手続きを行うには色々な注意点がありますので当方にお問い合わせください。