通勤手当と労働時間の把握

今週は、ある顧問先の通勤手当と労働時間集計に振り回されました。

この会社では自家用車による通勤は認めていないのですが、複数の支店で支店長が自家用車通勤を黙認していたのです。禁止してしまえば良いだけのようですが、実際に支店の通勤事情を聞くと、とても公共交通機関では通勤できない社員がいるのです。それで各支店長は独断で秘密裏に承認していたようなのです。そこで、黙認の状態を避けるために就業規則をチャンと変更した方が良いだろうということになったのですが、黙認していた間に好き勝手なことをしていましたから、制度化すると色々と制約される点がでてしまうのです。そのため、現場の実情を聴き、就業規則の変更案をつくりました。郊外型の店舗が増えたため、そのような支店に通勤する社員には配慮する必要があるにしても、会社として黙認する状態は避けたいものです。

次に、この会社では残業代が正しく支払われていないため、労働時間の集計をプロである私が計算し、残業代の過不足を精査することになりました。従来は自社で集計されていましたが、私が精査した処、

①割増賃金の単価計算が適切ではない。

②深夜労働時間が集計されていない

③1日8時間を超えて働いた場合には残業として集計していたが、1週間で6日間勤務した場合に1週間の法定労働時間40時間を超えて働いた時間の残業時間処理が正しく行われていない。

④所定休日に出勤したときに、この会社では定額の休日出勤手当が支給されるのですが、賃金が多い人の中にはその定額休日出勤手当では未払いが発生してしまう人がいる

⑤見込割増賃金制の会社ですが、労働時間の集計を正しく行っていないため、見込残業代を超えた残業をした人には追加の残業代を支払うべきなのに支払われていない。

⑥従来は一定時間数以上の残業をした場合には追加の残業代として一律2万円を支払っていたようなのですが、追加残業代が必要な人の中には2万円だけの追加ではまだ未払賃金が発生してしまう人がいる一方で、追加残業代の支払いが必要のない人に支払っていた(全社としては過払いの状態だが、個人別にみると未払い賃金が発生している人がいる)

などが分かりました。

この会社は、労働時間を記録し集計することを極端に嫌う傾向が強いのですが、それは労働基準法で定められている会社の義務ですし、従業員の健康管理のうえからも必要なことです。ましてや未払賃金が発生しているとなると早急に賃金計算のやり方を再構築することが必要です。しかし、オーナーも社長も今ほど労働時間や残業代未払いが問題にされなかった時代に育った人達ですから、理解してもらうのが大変です。

昔話しになりますが、ある会社に労働基準監督署の調査が入り、多額の未払賃金があることが判明したのですが、社長が75歳を超えていて法律を理解できないため労働基準監督官も「70歳を超えた人に法律の説明をしても理解しようとする筈がない」と言い、法律を元にした説得をあきらめ、社長に対してヒトとしての道を説いていた記憶があります。この会社の場合は、理解はできませんでしたが、行政命令として強制的に支払わされました。