解雇されたい従業員と解雇したくない経営者

顧問先の会社が、4月1日からある部門を廃止して、それまでその部門が行っていた業務を外注することを2月中旬に決定しました。

会社は外注先と交渉して、

①従業員の勤務地と担当業務は従来通り、

②給与を昇給させその昇給分を業務委託費として元の会社に請求すること、

③退職金制度が外注先には無いのでそれに代わるものとして各従業員が長期生命保険に加入して掛け金を元の会社が負担すること

まで合意できたので、その部門の従業員8名に外注先に転籍するように勧めました。このように手厚い手立てをとっても、その部門で費やされていた経費の方が外注費の約3倍の額となるのが実態だったのです。

しかし、全員が転籍することを拒否したのです。トラブルはここから発生しました。

会社は説明会や個人面談会を開催して個人別に事情を聞いたうえで配置転換等も検討しようとしましたが、説明会や個人面談会には誰も参加しませんでした。しかも従業員は、労働基準監督署にまで相談に行き、会社がやろうとしていることが解雇であることを何とか証明してもらおうと行動していました。

この段階まで会社は解雇する意思はなく、解雇を回避する努力を一生懸命に行っていたのですが、従業員が勝手に「解雇だ!! 」と決めつけて全く話し合おうとしなくなったのです。

しかし、会社は業務委託先への業務引き継ぎの都合もありますから、3月19日には最終決断をせざるを得ない状況でした。そのため急遽会社は会議を開催し、止むを得ず解雇することを決定し、従業員に解雇予告手当を支払って3月31日付けで解雇することにしました。私は久しぶりに平均賃金と解雇予告手当(法定日数から残日数を引いた額)を計算する羽目になってしまいました。

この事件は一応は一件落着しましたが、この事件で私が思ったことは「労働基準法や労働契約法他の法律で従業員を保護する仕組みは出来上がっているが、それを悪用する者が出始めているから何か規制する方法を考えるべきである」ということです。