ある会社の営業マンが、軽微な交通違反を繰り返し、最後に警官と会社から「次に交通違反をしたら免停となること」を警告されていたにも関わらず、私生活上で21㌔以上のスピード違反を犯したため、1年間の免許停止処分となってしまいました。
その為、この会社から「営業マンとして仕事をするには運転免許証が無ければどうしようもないのだが、どう処分すべきか?」という問い合わせがありました。
この従業員は、他県の支店に配属されている営業マン(実質的には現地採用の従業員)です。支店には支店長の他には営業マンが数名と女性事務員さん1名がいるだけで、営業活動ができなければ支店では仕事になりません。また、この会社の営業マンは配送・配達係も兼ねていますから、営業車の運転ができなければ営業マンとしての仕事を全うすることができません。そのためか、この従業員の実母が「本人が免停期間中は本人の運転手を務める」と申し出てきましたので話しが厄介です。
そして、この会社全体では、本社に商品管理部門と経理・総務部門だけがあり、本社支店間の配置転換や転勤の実績が過去にあります。そこで、本社の商品管理部門への転勤を命じられないかを検討しましたが、商品管理部門は過剰人員の状態で寧ろ人員削減の検討をしている状態であることがわかりました。尚、当然のことながら知識が無いため経理・総務部門に配置転換させる訳にはいきません。その結果、配置転換・転勤できる職場が無いことがわかりました。
実母が運転代行を申し出ている件については、「会社は事故発生に備えて安全配慮義務を全うするため、また会社の信用を保持するために運転代行を認める訳にはいかない」という結論となりました。しかし、子供の免許停止のために母親が運転代行を申し出る時代になったことは驚きでした。
その結果として「運転免許の1年間停止処分は従業員の責任で発生したものであり、その結果として仕事が出来なくなった(雇用契約上の労務提供ができなくなった)のは従業員の責任に帰すべきものであるから、①免停期間中は雇用契約は維持するものの無給状態で休業する(休職制度その他条項の適用)、②自らの意思で退職する(辞表を提出)、または③就業規則の普通解雇の定め「資格を必要とする職務に従事する者が資格を喪失した場合」を適用して会社が本人を普通解雇にする、の3パターンを私は会社に提案し、本人と話し合いを行ったうえで決定するようにとアドバイスしました。
その上で会社は直ちに本人と話し合いを行い、本人が「②自らの意思で退職する」を選択したので、その場で直ちに辞表を提出して貰ったそうです。
屋上屋のようなことをやっているようですが、昔しと違い従業員が権利を主張して訴訟するケースが増えている現状を考えると、この程度のことは行い記録しておくことが必要な時代となったと私は考えています。バスやトラックの運転手さんのように運転のプロであれば、雇用契約時に職種限定採用と見做される可能性が高く、また私生活上といえ交通違反は雇用契約に重要な影響を与える判例があります。しかし、今回のように営業職となるとその判断にはデリケートな要素があると言える(運転免許なしでも営業活動ができる可能性はあり、また他部署への配置転換・転勤の可能性もある)ので、判断は慎重にした方が後日のためになると思います。特に最近は、退職する際には円満退職であっても、退職後に元従業員が友人やインターネットで色々な情報を得て訴訟に持ち込むというケースも増えてきていますから・・・・。
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