裁判上の和解

数年前から残業代未払事件を裁判で争っている会社にお伺いした処、「裁判官が提示した和解案に同意することにした」という報告がありました。訴訟額は約350万円で、裁判官が提示した和解案の額は100万円でした。会社側はこの和解案に応諾することを決めましたが、まだ原告側が応諾するか否かは分かりません。しかし、私はホッと一安心しました。

裁判となってしまった場合は、自らが主張すべきは主張すべきですが、判決が出るまで争ったとしても弁護士費用、資料準備に費やされる時間、長期間に及ぶ心労等を考えると、会社は失うものの方が多く得るものはほとんど無いと私は思います。そして、そこで費やされる労力を費用を、もっと前向きで生産的なことに使った方が有意義ではないかとも考えます。

また、「和解に応じた」とは「訴訟に勝った」のでも「訴訟に負けた」のでもなく「争うことを止めた」だけだという点にも留意することが必要です。

そして更に、労働紛争に関して会社が「法律論争で会社が勝訴しよう」としても「基本的に法律そのものが労働者保護の考えをベースにしています」から、両者にとって中立的立場から判決が言い渡されると期待するのは無理な話しで、寧ろ会社は不利な状況からスタートしていると考える方が妥当ではないか(その為、反論・答弁書等もそれなりのものにせざるを得ない)と思います。

また、これは別の会社からの相談でしたが、一昨日の夜中に社長から労働相談の電話がかかって来ました。この社長は数年前に、労働紛争では珍しい「和解」(裁判ではなく裁判所で行う双方の話し合いの場)を経験されていました。そこで、社長から詳しく状況をお聴きしたうえで当時の体験を社長に思い出してもらい、労働紛争として裁判所で従業員と争うことにならないように、従業員とよく話し合いをして労働紛争にならない努力をするようにお勧めしました。そうした処、当時の体験を社長は思い出したらしく私が提案した方法を直ぐにやってみて裁判上の争いにならないように努力してみると言われていました。

不幸にも裁判上の争いとなったときは、主張すべき点は主張すべきであると私は考えますが、感情的にならない為に「感情には勘定(損得)で」判断するように心掛けて可能な限り冷静に判断することが必要であると思います。