認知症に関する勉強会

昨日は、広島県社会保険労務士会が主催した「成年後見人のための研修会」に参加しました。テーマは「知っておきたい精神科疾患の基礎知識」でしたから、成年後見人としての知識としてだけではなく、普段、社会保険労務士として鬱病等の相談を会社から受けるとき、あるいは精神疾患で障害年金手続きの依頼を受けたときに役立つのではないかと考えて参加しました。ましてや、普段はお話しする機会が無い精神疾患の専門医が講師予定者でしたから、是非参加したいと考えていました。

内容はやはり成年後見人用の内容なので「認知症」に関する基礎知識の講演が大半を占めましたが、統合失調症の基礎知識も教授して下さいましたので、実務上、大変参考になりました。

統合失調症とは一昔前までは「精神分裂症」と呼んでいた症状です。普段、企業からの相談でも、偶にですが統合失調症の相談があります。今まで私は「統合失調症とは躁鬱病が進行した状態である」と理解していましたが、

①統合失調症は10代後半から30代前半に発症し易い精神疾患であり(若いときに発症する)、

②統合失調症は100人のうち1人の確立で発症する病気であること(発症する確率が予想より高い)、

③統合失調症には陽性症状、陰性症状、認知障害などの多彩な症状がでること。従って躁鬱病の症状もでること。

などが分かり、私の今までの理解「躁鬱病が酷くなったのが統合失調症である」という理解が間違っていたことが分かりました。そして一般的には、一般の人が変だと気付くのは陰性症状が出始めたときであり、陽性症状の段階では気づかないことが多いということも、今後本人やご家族とお話しをするときの参考にすべきことと思いました。

このように専門家から正しい知識を教授して貰った上で過去の私の実務上の体験を振り返ると、みなさんご自分の精神状態の良いときだけ私とお会いされましたから、障害年金の申請書類を作成する情報を聞き出すのに3~4カ月程度かかりましたが、統合失調症の症状としては初期~中期の陽性状態と陰性状態が交互に出る時期に私に相談されていたようです。ただし、単なる躁鬱病と違うナ!!と私が思っていたことは、私の体験上では皆さん幻覚症状があると訴えられていたことです。

一方、昨日の研修のメイン・テーマであった認知症は単なる加齢に伴う物忘れとは違い、

①目の前にいる人と自分との関係を自覚できなくなり、単に名前を思い出せない程度ではない症状になること

②通帳・印鑑・保険証などの置き忘れ・紛失が頻繁になり、置いた場所を思い出せないだけではないこと

③食事したこと自体を記憶できず、単に何を食べたかを思い出せないのではない症状がでること

④約束したことを覚えていないのであり、約束をうっかり忘れてしまうのではないこと

⑤曜日や日付だけでなく、月や季節さえも間違える症状がでること

などに特徴があるそうです。

残念ながら認知症を治したり進行を止める治療方法はまだ開発されていないそうですが、進行を遅くする治療法はあるそうです。

そして認知症には

①アルツハイマー型認知症

②レビー小体型認知症

③前頭側頭型認知症

④脳血管性認知症

と種類があり、アルツハイマー型認知症が50%を占めるそうです。

これらの専門的な基礎知識を専門家から教授して貰いながら、患者さんのMRI画像やCT画像を見せて貰ったときは、脳細胞が死んでが萎縮している状態がよく理解できました。特に、直近のことを記憶する海馬という脳の部分が委縮してほとんど無くなっているMRI画像が印象的でした。だから「認知症の人ができないこと、理解できないこと等を、本人に理解させ、やらせようと思っても、本人にはその為に必要な脳細胞が無い状態なのだから、無理なものは無理です」と専門家が教えてくれたことは大いに参考になりました。

また更に、アルツハイマー型認知症の場合、①発症前期、②初期、③中期、④末期と症状によって分けられ(但し、症状は個人差があるので判定が難しい)、個人差はあるものの平均すると①発症前期から約12年前後で死亡すると専門家が教授してくれたことは私の認識を改めることになりました。私は今まで認知症と死亡時期とは余り関係が無いことと理解していましたが、よく冷静に考えれば、認知症は脳細胞が死に脳が委縮していく訳ですから、いずれは認知症が原因で死亡することになるのは当たり前の話しだと思います。ただし、この専門家が言うには『日本では認知症と認定されて5~6年で死亡するケースが多いので、認知症と気づく時期が遅いのではないか?」と警告していたことが耳に残りました。

会社では躁鬱症の従業員が増え、また社会的には高齢者が増えている昨今の状況なので、今回の研修会は大いに参考になりました。