セクハラ解決やパワハラ解決の第一歩

セクハラやパワハラ問題は、発生しないように事前に従業員教育を行い、予防することが一番大切です。しかし、予防していても発生してしまうのがセクハラ問題やパワハラ問題の悲しい点です。如何せん、被害者がどう感じたか?によって、同じ行為・発言がセクハラやパワハラになったり、ならなかったりすることが多いからです。

残念ながらセクハラ・パワハラが発生してしまった場合に一番大切なこと!! それは、自分達だけで解決しようとせず専門家に助言してもらうことです。「知っているつもり」「わかっているつもり」で自分達だけで解決しようとして、かえって問題を拗らせてしまう場合、問題解決を遅らせてしまう場合が多いようです。丁度、「風邪をひいた」ときに自己判断だけで軽視してしまい、肺炎になって初めてコトの重大さに気づくようなものです。風邪にかかったかな?と思い直ぐに「かかりつけ医」に診察してもらえば2日で治せたものを、医者に行かずに自力で治そうとしたため肺炎となり、治すのに1週間もかかってしまったということは良くあるケースです。インフルエンザなら症状が酷いので直ぐに通院するのに、風邪ならば軽視してしまう・・・。交通事故や金銭不正事件だと直ぐに対処するのに、目では見え難いパワハラ・セクハラ問題では中々解決に向けての着手をしない傾向があります。

ただし、専門家でも不適切な助言・経験不足で知識だけの助言をする輩もいますので、どの専門家に相談するかを迅速かつ適切に決めることが必要です。

例えば、いま私が解決への助力を求められている残業代未払問題は、会社はまず税理士に相談し、税理士が直ちに弁護士に相談し、弁護士が私(特定社会保険労務士)に相談してきました。相手方から内容証明郵便が届いてから私が返信用資料を作成完了するまで約10日間かかっていました。10日間といえば(自分には)短いようで(相手には)長い期間です。しかし、この会社が運が良いのは、相談を受けた各専門家が自分で抱え込まずに適切であろう別の専門家に順次照会して行ったことです。

そして別の事案では、金銭不正疑惑事件を発生させた責任者を某社団法人が懲戒解雇し、裁判では敗訴しました。この社団法人のメンバーの中には弁護士さんもいました。私は担当者の知人として簡単な質問・問い合わせがありました。敗訴の原因は、懲戒解雇をする際に「正しい手順」を踏まず、調査不十分であり、また処罰の軽重を考慮すると解雇するのは処罰として重すぎるということのようです。弁護士さんや私の費用をケチり簡単な相談だけで済ませて「わかったつもり」「知っているつもり」になって自分達だけで懲戒解雇をしてしまったのです。インフルエンザにかかっているのに風邪だと自己判断して、通院せずに街の薬局で藥を買って治そうとするようなものです。

実はセクハラやパワハラは残業代未払問題や懲戒解雇よりも、もっと面倒なのです。セクハラ・パワハラ問題は当事者が三人います。「被害者」「加害者」そして「会社」です。会社も管理者責任がありますから「当事者」なのです。過去、セクハラやパワハラの相談を会社から受けたときに一番多いのは、会社に当事者意識が無いケースです。まるで他人事です。裁判となり被害者から管理者責任を問われ民事損害賠償を請求されるリスクがあることに気づかれないのです。そのため、パワハラ・セクハラの相談を会社から私が受けたときは、まず会社も当事者であることを意識して貰うようにしています。

そして更に厄介なことがあります。パワハラ・セクハラ問題が発生して比較的多いのが、加害者にその意識が無い場合が多いのです。加害者は「自分は今まで通りのことをやっている。どこが悪いのか?」と逆ギレされてしまう場合もあります。過去、私が体験したセクハラ事件では加害者が68歳で、その人からすれば「昔しからやっていたのに何故いけないのか?」言われ、説明を繰り返したのですが高齢のため社会環境が変化したことを本人が理解できず、結局本人がよく理解できないままに懲戒処分をせざるを得なくなりました。

またセクハラ・パワハラ問題は証拠が残っていない場合が多いので、「事実」を把握することが難しく、被害者・加害者それぞれが主張する事実と他の従業員が認識している事実を元に「真実」を解明・憶測していくしかない場合が多いのです。

また更に、パワハラは上司が加害者の場合が多く、中小企業では「その上司にしか出来ない仕事」を任せているので、加害者に対して相応の処罰をすることが出来ない場合も時にはあります。

その為、セクハラ・パワハラ問題の解決は、社内の人(当事者)だけで解決しようとしても無理(巻き込まれてしまい、感情が移入してしまう)なケースが多いのです。また、前記したように加害者に加害意識が薄いことから、会社が被害者と加害者の板挟みになることも多々あります。そして更に、これらの問題は放置すればするほど状態を悪化させることが多いのです。

チョット古いコマーシャルですが、「(風邪に)かかったかナ?と思ったら××(風邪藥の名称)」とあったように、①早期に対処すること、②社内だけで解決しようとせず事件の推移を客観的に鳥瞰できる社外の専門家に相談すること(早期であれば軽微な費用で済むことが多い)が大切であると思います。

尚、会社でセクハラやパワハラ問題が発生してしまった場合には、専門家だけではなく行政機関(労働局機会均等室)に会社が相談し助言を求めるという方法もあります。