1週間の所定労働時間数と1カ月の所定労働日数は?

2月以降、1店舗あたり4~6名の従業員がいる散髪屋さんを20店舗展開している会社の給与規程を再構築していました。

この再構築で一番手こずったのは、「1週間の法定労働時間は44時間」であるから「1カ月の法定労働日数は、31日の月は24日、30の月は23日」であることを理解してもらうことでした。何故ならば、一般の企業の場合の「1週間の法定労働時間数は40時間」ですから「1カ月の法定労働日数は、31日の月は22日、30日の月は21日」となり、そのことをこの会社の総務責任者が聞きかじっていて、中々理解しようとしなかったからです。その結果、過去の賃金計算では休日出勤割増賃金が過払いされていていました。要するに、総務責任者の勘違いと独断で1週44時間制のメリットを放棄してしまってたのです。この会社の社長も「当社は1週44時間制の会社だから隔週週休2日制で良い筈なのに何故に毎週週休2日制として賃金計算しないといけなすのか?が分からない」と相談を受けた当初から言われていました。

総務責任者は「社会保険労務士に相談しながら決めた」と言っていましたが、私が推測する処によると、その総務責任者は自社の業種や規模等を正しく社会保険労務士に伝えることなく世間話的に相談したに過ぎないのではないかと思います。一般の人がセミナーに参加したり、専門家に相談して一般常識を持つことは良いことなのですが、労務管理に関する知識の場合には企業の業種や規模によってその内容が異なる場合があります。従って、一般論としての知識を自己学習するだけでなく専門家に個別案件として相談することが必要です。弁護士に相談する場合でも似たことが言えます。弁護士に相談しても、それが単なる一般的な相談であるならば、弁護士も一般常識的な回答しかしてくれません。しかし本当に自社が直面している問題の解決を弁護士に依頼しようと考えるならば、少々割高な料金を支払ってでも自社の抱える問題の具体的内容を正しく伝える(感情的にならずに)ことが必要です。これは私が日常業務として個別労働紛争に対処していて痛感する処です。

さて、この会社では1カ月の法定労働日数通りに今後の賃金計算をすることになったのですが、それでは賃金総額(割増賃金)が激減してしまう従業員が発生することがわかりました。そこで私と社長とが相談し、一定期間はその他手当として特別な加算を行い、徐々にその額を減少させ次回の昇給時または賞与時までに解消することになりました(激変緩和措置)。

実は、この会社の場合はもう少しお話しが複雑なのです。この会社の法定労働日数は「暦日日数から7日を引いた日数」(31日の月は24日、30日の月は23日)なのですが、この会社では「暦日日数から5日を引いた日数」が1カ月の所定労働日数(会社が定めた出勤すべき日数)と社長が創業以来決めていたのです。そのため毎月の賃金も2日分多い休日出勤割増賃金が支払われていました。そこで、この金額を私は見込割増賃金とし固定的賃金として毎月支払うように給与体系を変更して、現場で周知されている「月間の所定労働日数は暦日日数から5日を引いた日数」という意識と、賃金計算上の休日出勤日数との誤差を防ぐようにしました。その他にも色々な変更を賃金体系の中に織り込んだのですが、これ以上は守秘義務違反となりますので記載することを自重することにします。

当然のこととして、この会社の賃金計算は当面は私が処理することになりました。そこで、私は「タイムカードをクラウド化すること」を提案してタイムカード集計が合理的にできるようにすることを勧めたのですが、それにはもう少々時間がかかるようです。

それにしても、「素人(総務責任者)の知っているつもり」と「本当は知らなかった(勘違いしていた)」という差は怖いものですネ・・・。