65歳以後に老齢厚生年金の請求手続きをする場合の注意点

昨日は、67歳の人の老齢厚生年金の裁定請求手続きをお手伝いしました。この人は、今でも会社で働いていて、会社から貰う給与が多い(約月額50万円強)ので年金は貰えないものだと諦めて裁定請求手続きをしていなかったのです。

66歳以後に年金の裁定請求手続きをする場合には、「年金の繰下げ請求」もすることができますから、注意しなければいけません。「年金の繰下げ請求」とは、「年金を貰う時期を自らの意思で延長し、それによって年金額を増やそう」という手続きです。この人の場合、65歳から現在(67歳6カ月)まで貰えていた筈の年金の「繰下げ請求手続き」をすれば、現在以降の年金が一生の間、121%に増額されることもわかりました。

年金の裁定請求手続きをする前に、①前記の「繰下げ請求手続き」をして今後貰える年金額を増額するか?、②繰下げ請求手続きはせずに、65歳から現在まで未請求であった年金額を一時金として貰うか?をこの人に選択してもらう必要があります。しかし、本人にはどちらが得かの判断基準がありませんから、選択のしようがありません。そこで、②の一時金の金額を計算して②の増額される年金額(21%)で割って年数を計算しました。その結果、12年を超えて年金を貰い続けると一時金で貰うよりも繰下げ請求手続きをした方が得になること、ただし年金制度が改革されるとその保証はないであろうこと等の説明を本人にした処、ご本人は繰下げ請求をせずに一時金で貰うことを選択されました(89歳以上生きているか否かは神のみぞ知ること!!)。そこで、早速、このことを同意書にして署名捺印して貰ったうえで年金の裁定請求手続きに入りました。

なお、この人は会社からの給与が多額なために65歳以前の特別支給の老齢厚生年金は全額が支給停止の状態でしたが、もし全額支給停止でなければ現在から遡って5年間の年金が貰えていた筈です。

その上で年金事務所に裁定請求手続きをしに行ったのですが、ここで新たな点が判明しました。この人の奥さんはこの人より1歳年上で既に年金を受給しており、この人が年金の裁定請求手続きをして奥様も別の手続きをすれば、奥様は過去2年間分のオマケの年金(振替加算)が貰えることが分かったのです。このことをご本人に連絡すると大喜びでしたが、奥様の所得証明を区役所まで貰いに行く必要があります。ご本人が喜んで区役所まで行くことを約束されたことは言うまでもないことです。しかし、これが原因で奥様の所得証明が揃うまで本人の年金の裁定請求手続きは延期せざるを得なくなりました。ヤレヤレ・・・。

しかし、年金制度は複雑ですネ!! 一般の人が理解できなくしたのは一体誰なのでしょうか? 私の信条は「シンプル イズ ベスト」であり「複雑なことは間違っていると考えろ!!」ですから、いまの年金制度が如何に本来の姿から外れたものとなっているかを痛感した次第です。