ある顧問先の従業員が退職するに際して、それまで入居していた借上社宅(会社がマンション等の借主となり、それを従業員に使用させる社宅)の原状回復(元のようにキレイにすること)義務に関して問題を起こしてしまいました。原状回復せずに退職・退去してしまい行方知れずとなってしまったのです。
マンションの不動産屋さんは当然のこととして敷金と原状回復費用とを相殺しようとしますが、会社の社長さんは「従業員が使用していたのであるから借主は従業員であり、原状回復義務は従業員にある」と言って相殺するのを拒んでしまったのです。
しかし、契約書を確認した処、借主は会社でした。ですから原状回復費用と敷金が相殺されるのは防ぎようがありません。このマンションは不動産屋(マンション所有者)と会社とが賃貸契約を交わしたものであり、不動産屋さんは会社と従業員との間の費用負担に関しては預かり知らぬ処です。
このことを社長に説明した処、敷金と原状回復費用とを相殺することを不承不承ながら認めました。そして今後このようなことが起きないようにするための借上社宅契約書をつくることになりました。このときに私が注意した点は「賃貸契約」と「使用契約」とは違うものであることです。賃貸契約を従業員と会社とが交わすと「借地借家法」の規制をうけることになり、居住権等を従業員から主張される可能性があります(会社が従業員から退去料等を請求される可能性がある)。そこで「使用契約」として従業員には使用権だけを認める内容とすることにしました。
そして更に、この社長は個人でマンション経営も行っていましたから、その"マンションに入居する一般の入居希望者"と"借上社宅に入居を希望する従業員"とに明らかな違いがあることを認識してもらう為に、今後は一般の入居希望者との賃貸契約は不動産屋さんが使用しているものを雛形に契約書とし、借上社宅への入居を希望する従業員へは会社が「借上社宅管理規程」をつくり使用申込書等の書類雛形を使用することにしました。
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