小規模なほど就業規則作成は大変!!

私にしては珍しく、就業規則を作成するのに3カ月もかかってしまいました。

従業員数10人未満でやっていた小売店さんが規模を拡大し従業員数が13名になったので、就業規則を作成・届出したいと依頼されてきたのです。

就業規則を作成するため、当初にお伺いしたときに社長さんと奥様から就労の実態をお聞きしてビックリしました。営業活動に専念されてきたせいか、就労の実態がうまく把握されていないのです。ご夫婦で言われることが違っていました。今までは仲間意識でやっていたらしく、賃金の決め方や働くべき時間帯の決め方等がいい加減なのです。そして、私が聞き込んでいくうちに、運が悪ければ労働紛争にもなり得る事件をいくつか経験されていることも分かりました。法律のことを余りにも知らないことは兎も角として、全体が把握できていないのです。全体が把握されていないのに"分かっているつもり"になって運営しているから、事態は複雑を極めていました。今までは商工会の労働事務組合に事務委託をして諸届を処理し、給与計算は奥さんが見様見真似で手計算でされていたそうです。労働保険事務組合や相談相手の税理士さんでは、社内の人間関係を良して労働紛争を防止し、それらを通じて経営をより良くすることには無理があります。

このようなことは、よくあることです。開業して暫くの間は営業活動に専念しなければ事業は成功し難いですから、どうしても労務関係(特に法律関係)がナオザリにされてしまいます。そして、どこかの時点で"痛い思い(労働紛争や労基署調査)"を体験されて、法律を遵守することの大切さを痛感される場合が多いのです。

しかし、この会社の運が良い処は、特別に"痛い思い"をする前に知り合いの社長さんから私に相談してみることを勧められ、半信半疑で相談・依頼があったことです。

ただし、このような場合に注意しなければならないことは、悪戯に"法律だから・・・"という理由だけで一機に新しいルールや規則を決めてしまうと、社内の人間関係がかえってオカシくなってしまうことが多い点です。

そこで、まずは賃金、就業すべき時刻、休日ほかのことを"労働条件通知書"にして、書面で個々の従業員さんと確認し合うことから初めてもらいました。このときに困ったのは、通勤手当の決め方がバラバラ(その場凌ぎの思いつき)であった為、従業員間で公平性が保たれていなかった点をどのように訂正していくかという点です。それと、パートタイマーさんやアルバイトさん達の始業・終業時刻と休憩時間をどのように定めるかという点です。時間をかけてユックリと合意を成立させていきました。ここで時間を費やしたのは、過去仲間意識で暗黙のルールが出来上がっていたのをどのようにして合法的なルールにするか、経営者と従業員の意識変革をモタラすためでもあります。

たった13人の従業員さんですが、労働条件通知書が完成するまで約2カ月を要しました。会社の経営状態を決算書で見ながら、また社長と奥様にはこの間に労働基準法や労働契約法の定めの説明をしていきました。私の感想としては、"社長さんの人柄が良い(甘い)から、従業員さんの都合の良いように振り回されている。「自由と責任」と「放任」とを勘違いしている。"という実態でした。この間に、働くときの服装・化粧・アクセサリー・香水のこと等の合意も形成させました。当然のことですが、小売業ですから従業員が"自分視点"でこれらの是非を判断するのではなく、"顧客目線"でこれらを判断するようなルールを形成していきました。

2カ月半が経過してやっとのことで就業規則を作成することができ、そのサンプルを従業員代表者に見せた処、そのサンプルは手垢で真っ黒になって私の所に帰って来ました。熟読されたようです。

サービスとして"特別条項付の36協定""賃金控除協定書""育児介護規則に伴う協定書"なども創りました。

私の普段は従業員数100名前後の企業からの相談が多いのですが、小規模なほど人間関係と過去の慣習が絡んで難しいということを痛感しました。

また、社長さんがこの間にシバシバ「儲かっている筈なのにお金が無くて困っている」と言われていたので、私が認定支援機関として決算書をチェックし、「売上仕入比率が高すぎること」「利益が在庫となってしまっていること」「支払サイトが同業他社と比較すると少し短いこと」等の改善点を指摘し、それらに対処するには具体的にどうすれば良いかということも提案しておきました。

「ヤレヤレ・・・やっと終わった!! 」と言うのが私の心境です。しかし、大赤字の仕事でした。