中国での労災保険講演会の後始末として、現地で名刺を頂いた方々にお礼の葉書を郵送し、そして私を推薦して頂いた広島商工会議所会頭に報告をしに伺いました。ご多忙の様子で、生憎、ご不在でしたが、専務理事に報告書を提出させて頂きました。これで出張整理も一段落(事務所内の書類整理はまだですが)です。
そんなことをしていると、ある会社から「労災事故後に転院した病院に転院届(6号)を被災者が提出したら、治療費の全額を支払うように言われたのだが、どうなっているのか?」という問い合わせがありました。この連絡は会社の総務責任者からの問合せのため詳しいことが分からないので「調べた上で折り返しの電話をさせてください」と取り敢えず回答し、早速、転院後の病院に電話することにしました。
転院後の病院に電話した処、直ぐに理由が分かりました。
労災事故は9月初旬に発生し、被災者本人は労災という知識が全く無いため健康保険を利用して治療をうけ、上司に報告は報告したものの上司から本部への連絡が遅延し病院に提出する労災書類の作成が遅れた為、業務外の負傷として健康保険証を使って通院していました。最初の病院も転院後の病院も当初は健康保険を使って治療を受けていたのです。
その結果、最初の病院は健康保険から労災保険に切り替えて既に本人から徴収していた治療費の本人負担分(3割)を返金してくれていたのですが(大抵の病院はこうしてくれます)、転院後の病院は独立行政法人が運営する病院のため健康保険から労災保険への切り替えをすることが出来ないので、転院届提出後の治療費は労災保険として処理するが、当初に健康保険で受けた治療分は一端全額を病院に支払い、それを療養の費用請求(7号様式)で労基署に請求し労基署から本人が返金してもらうように伝えたらしいのです。労災保険での治療費と健康保険での治療費とでは、別々のサイフから治療費が病院に支給される為、今回の転院後の病院の処理が本来の処理方法なのですが、一般の病院では患者の負担を考え、また煩わしい手続きを省略できるように配慮してくれているのです。ただし、大半の病院がこのように楽に変更処理をしてくれますから、それに慣れてしまい本来の手続方法が煩わしく思えるのです。
そして転院後の病院で治療費10割を支払うように請求された被災者は、転院後の病院の指示を「今後とも治療費は全額支払わなければならないと言われた」と勘違いしてしまったようです。
私もこのようなことは数年ぶりのことなので、手続きが改正されていたらいけませんから一応労基署に相談をし、本人が一端治療費全額を立て替えないでも良い方法(特例措置)を確認しました。実は、この人は最初の病院で手術ができないので転院したのであり、転院後の病院で手術を受けたので治療費全額を立て替えるとなると、かなりの高額になるのです。
その上で会社の総務責任者に連絡をしました。結局は特例措置ではなく、病院の指示通りに全額を本人が支払えるように会社が本人に貸付て、労基署から返金されたら本人は会社に返すということになりました。
尚、上記の特例措置とは、
①療養の費
用請求書(7号)に
②病院の請求書と
③既に本人が支払っている治療費の3割(健康保険の本人負担分)の領収書
を添付して労基署に提出し、労基署が本人に支払ったら、それを本人が病院に支払うという方法です。ただし、これを本人がやるとなるとかなり煩雑な作業を必要とします。
ヤレヤレ、帰国早々の応用編でした。
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