中国の大連に出張して講演してきました

中国の大連市人力資源和社会保障局(日本の労基法・労災法・雇用保険法・健康保険法・年金法をまとめて管轄するような役所)の招聘をうけ、広島商工会議所の推薦により、同市に11月11日~13日の間出張して「日本の労災保険」について「実務的な講演」を行ってきました。

現地では、于局長をはじめ皆様からきめ細やかな気配りをして頂き、東京出張と同じようにリラックスして滞在することができました。私の仕事上の都合から日程を2泊3日にせざるを得なかったため、現地では観光はできませんでしたが、それでも通訳の張さんの機転で、空き時間を利用して市内にある歴史物展示会場と満鉄本社を観光させて頂きました。

約2カ月前に広島のある経済人から本件の打診があってから、直ちにその準備を始めました。大連市の概要や歴史は言うまでも無く、JETOROの資料で現地の社会保障制度を調べ、更に日本の労災保険の特徴を改めて明確にする為に世界各国の労災保険についても調べてみました。その合間を利用して中国語の練習も「挨拶程度」は出来るように少しだけ練習しました。

そのとき一番困ったのは、現地の聴講予定者だけでなく主催者が知りたいことが正確に把握できなかったことです。予めメールでやり取りをしましたが、言葉の問題と表現方法が大きな壁になり、またお会いしたことも無い人の使う言葉の真意(日本で言うところの"行間の意味")が中々読み取れなかったのです。色々と私なりに検討しました。法律・言葉・文化・価値観・習慣の違う人達に「どんなことを」「どのレベルで」「どのように表現して」お話しすべきか? 迷い、何度も資料(レジメ)を創り直しました。その挙句は、私の講演原則に戻り「難しいことを分かり易くシンプルに講演する」ことにしました。そして今回は言葉と価値観が異なる人達が聴衆者だから「出来る限り簡潔な文章にして」講演することにしました。そして更に、講演会ではプロの通訳の人が通訳して下さるとは聞いていましたが、1週間前に資料(レジメ)をメール送信して予め翻訳できるように配慮しました。

更に、講演会前夜(現地到着日)の晩餐会では「乾杯の礼儀」を失礼し、食事をしながら招待者の意図を読み解くことに専念しました。そうして早々にホテルに帰り自室で資料の再編集と講演の練習を何度も行いました。如何せん、講演時間が1時間(通訳する時間を除くと実質的には40分)しかありませんから、重要な点を外さないようにして、しかも時間を厳守しなければならないので、自室で何度も練習しました。まるで学生時代のゼミナール対抗討論会前夜の練習のようでした。「乾杯の礼儀」をお断りしたホスト役の人力資源和社会保障局于局長には誠に申し訳ないことをしたと思っています。また、当日朝は通常通りに朝5時(現地時間では朝4時)に起きて、資料の最後の見直しと講演の練習を行いましたが、1時間の時差があることを失念してしまい、同行して頂いた広島商工会議所元副会頭に迷惑を掛けてしまいました。

ところで、日本で「労災保険の講演を1時間で行って貰いたい」という依頼がある場合は、私はお断りします。何故なら時間が少なすぎるからです。しかし、今回は海外からのご依頼ということもあり、また開拓精神旺盛な私はそれにチャレンジしてみることにした次第です。その為、事前準備には十分な時間を費やしました。

講演会当日(12日午後)には、私が講演する前にドイツの専門家が「労災防止対策について」講演されました。そして私の講演では「日本の企業は労災事故防止に対してどのように考えているか」「労災事故が発生した場合、日本企業はどのように対応しているか」をお話しさせて頂きました。このとき初めて現地でパワーポイントを使うことが出来ることを知りました。そこで、資料をUSBにしていなかった私は「いまでは世界中で中国と日本だけが漢字を使います。多少、字体の違いはありますが、漢字でホワイトボードに書くことにします」とアドリブでお話ししました。

こうして始まった私の講演会ですが、それもアッと言う間に無事に終わることができまた。講演中は、通訳の人と呼吸を合わせること、聴衆の反応(特に既に面識があった司会者や日本から同行して頂いた商工会議所元副会頭の反応)に気配りしていました。

終了後に現地の通訳の人(講演会時の通訳とは別の人)「張恋さん」や現地の労災責任者である張さんは、オセイジを含めて「良い講演会であった」と評価してくださいました。しかし、本当の評価はこれからだと考えています。私の講演を現地の人が聴いて、労災事故が減れば良いと考えています。

そして、やはり労災保険について40分間でお話しするのはかなりの無理があったと私は思いました。お伝えしたいことをかなり省略せざるを得ませんでした。機会があれば、もう一度、追加講演を行いたいと思います。しかし、それは難しいことでしょうから、それらは資料にして局長にお渡しすることにしました。

現地の方々には、私が安心して安全に講演できるようにきめ細かい配慮をして頂き、誠にありがたく思っています。局長、副局長、労災責任者、国際人材交流協会の副会長、そして通訳をしてくれた張さんと景さん、その他私の為に尽くして下さった皆様、誠にありがとうございました。感謝の意に絶えません。

また、同時期に北京でAPECが開催されている関係からPMの心配をすることは無く、また食事もご配慮して頂き日本人好みの食事でしたので、皆さまのお蔭で東京出張時と同様に安心して(寧ろそれ以上に安心していました)講演会に専念することが出来ました。