振替休日と割増賃金

誤解している会社が意外と多いのでブログに掲載することにしました。

仕事の都合で休日を振り替えた際に「振替えたのだから割増賃金の支払いは不要だ!! 」と思っている会社さんが意外に多いのには驚きます。労働基準法を正しく理解するためには「休日に関する事柄」と「労働時間数に関する事柄」とを別々に考えます。休日振替によって法定休日(135%の割増賃金)の発生だけが防止できると考えるべきであり、休日振替によって法定の1週40時間が変更となる訳では無い(1週間の法定労働時間は40時間のまま)のです。

まず、1日の所定労働時間が8時間で、何も変形労働制を採用していない会社の場合(1週間の起算曜日も就業規則で特に定めていない場合)は、例えば第一週目は月曜日から金曜日までの5日間を各8時間勤務し土曜日を第2週の月曜日と振り替え8時間勤務したとします。そうすると第一週は48時間働いたことになるので、8時間が時間外労働割増賃金の対象となり125%の賃金を支払う必要があります。そして第2週は32時間勤務ですから100%の賃金を8時間分控除することになります。その結果、第一週の125%賃金と第2週のマイナス100%賃金との差し引きにより25%だけ追加で賃金を支払うことが必要となります(=休日を振り替えても割増賃金25%の支払いが必要となる)。

次に変形労働時間制を採用している会社の場合ですが、特に1年単位の変形労働時間制を採用している会社は注意が必要です。何故なら、1年単位の変形労働時間制と休日振替とは基本的に馴染まない(休日振替が頻繁に発生する会社の場合は1年単位の変形労働時間制を採用しない方が望ましい)からであり、また法律説明書では法律に従い訳が分からなくくらい詳細に説明されていますが、実務的には日々の勤務時間数だけを元に時間外労働の算出をしている会社が多いからです。

例えば、1年単位の変形労働時間制の届出の際に添付する休日カレンダーで、第一週は4日×8時間(=32時間)の勤務、第二週は6日×8時間(=48時間)の勤務が計画として届出されている場合に、もし業務上やむを得ない事情が発生した為に第一週を5日勤務、第二週を5日勤務(=第一週の休日を第二週に振り替えた)と変更した場合、第一週は40時間勤務、第二週も40時間勤務ですが、休日カレンダーで第一週は32時間勤務、第二週は48時間勤務と計画を定めていますから、第一週は8時間の時間外労働(125%)、第二週は8時間の勤務時間不足(マイナス100%)が発生するので、差し引き25%の追加割増賃金の支払が必要となります。その為、私は1年単位の変形労働時間制を採用している会社に対しては「休日カレンダー形式」で届出書を創るのではなく「休日日数届出形式」で届出書を作成し、該当月の前々月の末日までに該当月の休日を確定させることをお勧めしています。

以上では同じ賃金締切期間内で振替えが行われる場合を説明しましたが、月を跨いで振り替える場合も同じような考え方で割増賃金の計算をされるのが良いのではないかと思います。