求人難の状態が続いています。少子高齢化と共に労働力人口が減少し始めた昨今の状況を考えると、この状態はこれからも続くと考えます。
しかし、このとき注意しなければならないことは「変な人を会社に入社させると、会社をひっくり返されてしまう可能性がある」ということです。昔から「"手"を雇入れると、同時に"口"も入ってくる」と言います。また、私が体験した労働紛争のほとんどは、会社の理念・社風・慣習に馴染まないような人を性急に入社させてしまったこと(人物評価をしなかったこと)に原因があるようです。
その為、このような状況のときには、能力本位に偏ることなく人物本位のスタンスを崩さないことが大切です。そこで、中国の古典を紐解いてみると、中国の戦国時代の魏の文侯の宰相であった李克という人の人物鑑定法のポイントは、
①普段、どなな相手と親しくしていたか?
②富裕なとき、誰に与えていたか?
③高位についたとき、誰を登用したか?
④窮地に陥ったとき、不正を行わなかったか?
⑤貧乏したとき、貪り取らなかったか?
であったと記載されていました。
また、理想的な国家運営を行ったとされる唐の太宗(2代目)は、
①適任者がいない場合は誰か他の人に兼務させ、空席だからといって性急に人を雇入れることはなかった。
②自称する能力は信用せず、その人の地元での普段の評判を収集して、その人の人物評価を行った。
とされています。
そして更に、P.F.ドラッカー翁も「その人が真面目にコツコツとやる人柄であるか否か(真摯さ)を見よ!! 」と言っています。
しかし、昨今の法律では、仕事に関係が無い個人的事柄は質問してはならないことになっていますから、この点にも十分に注意して、採用面接を行う必要があります。
そして、求人難の状況が続くことを考えると、「優秀な人財を雇入れよう」と考えるのではなく、「変な人材は入社させないようにして、入社後の教育訓練で能力を高めてもらおう」と考える方が良いように思います。優秀な人財と巡り合うことを夢見るのではなく、人物として問題が無い人を入社させて社内教育によって優秀な人財に育て上げるつもりになること(その為には、教育訓練することが必要となります)が大切だと考えます。
帝王学の教科書「貞観政要」(前記の大宗と家臣の問答集)にも
※才を異代に借りず、皆、士を同時に取る
※なんの代にか賢なからん
といって、いま身近にいる人を上手く使って優秀な人財に育て上げよ
と言っています。