広島県が主催した「働き方改革」に関するセミナーにオブザーバー出席させて貰いましたので、その印象を報告させて頂きます。
≪最も印象に残ったコト≫
・「働き方改革」を軽率に実行すると、「働かない社員」が増えてしまう。
・働き方改革を実行するときには、従業員各自が果たすべき「役割」、それに伴う「目標」と「期限」(=使命)を具体的に個々の従業員のレベルまで決めておくことが必要である。
・それなくして「働き方改革」を実行すると、社内の規律は乱れ、組織としての統制がとれなくなり、「働かない社員」が増えてしまう。
・「働き方改革」を成功させる為には、各従業員が「時間」と「成果」に対する意識を徹底的に高め、従業員自らが「時間」と「成果」に対して責任を持ち、自ら考えることが必要である。
以上のことは、既に働き方改革を社内で実行し始めている企業さま3事例のお話しから感じ取りました。
そして、このブログの原稿を考えているときに、フッとPFドラッカー翁の次の言葉を思い出しました。『成果をあげる者は仕事からスタートしない。時間(の管理)からスタートする。計画からもスタートしない。何に時間がとられているかを明らかにすることからスタートする。次に時間を管理すべく、時間を奪おうとする非生産的な要求を退ける。そして最後に、得られた時間を大きくマトメる。』
そして更に、私が過去体験した労働基準監督署調査で残業代未払いを指摘された会社では調査後は経営者・中間管理職等の「時間に対する意識」が高くなり、調査前に比べると調査後の方が業績が向上している場合が多かったので、私は「残業時間数を減すために時間当たり生産性を高める工夫しましょう」と助言し続けていました。これを「働き方改革」のもとに官民挙げて推進していく時代となったようです。
≪講義内容で印象に残ったコト≫
(1)「働き方改革」とは、「時間・効率を意識した生産性の高い働き方」を意味するモノであり、その為に必要なことは
<働く時間や場所を見直す>
(a)働く「時間を短縮する」取組み・・・・・・・長時間労働の縮減・休暇取得促進など
(b)働く「時間や場所を柔軟にする」取組み・・・在宅勤務・短時間正社員制度・フレックスタイム制等
<社員の働き方の質を高める>
(c)仕事の配分・目標設定・・・・人事評価・管理職のマネジメントの見直しなど
(d)キャリア形成支援・・・・・・昇格・登用基準の明確化、管理職の人事評価のレベルと視点の再検討、上司支援によるキャリアプラン設定など
(2)どんな仕事から働き方改革を始めるか
仕事を敢えて分類すると
(a)日々のルーティーン的業務など、分担して担うべき基幹業務
(b)稀に発生する業務(緊急時、夜間、泊り、転勤等)
(c)企画立案など個々人のライフワーク的仕事
となるが、この中で(a)から「働き方改革」を開始すべきである。
(3)「働き方改革」を推進していく上で生じる課題を分類すると
(a)職場の課題
(b)会社の制度等の課題
(c)暗黙の了解として、又は慣習として行われているコトによる課題
(4)「働き方改革」推進を4段階に分けてみると
第1ステージ:「働き方改革」を「個人」が意識する段階・・・・ノー残業デイ、退社予定時刻のスケジュール化、休暇取得計画など
第2ステージ:「働き方改革」を「組織的」に意識する段階・・・各自のスケジュールの共有、集中タイム設定、カバー制度、緊急時体制のルール作り等
第3ステージ:業務削減・効率化・柔軟化の段階・・・・・・・・会議の効率化、無駄な業務の削減、ペーパーレス化、在宅勤務普及など
第4ステージ:経営資源の選択と集中及び最適化の段階・・・・・人事評価制度、経営目標、経営戦略(注力分野)の見直し等
となるが、ほとんどの企業は①で立ち止まってしまっている。そして、「働き方改革」で改善された成果を、人事評価等に反映させ従業員の処遇に反映する仕組みを設けることが大切である。
(5)「働き方改革」を成功させる為には、
(a)取り敢えずまず何から始めるかを決めたら、まずは試行期間(テスト実行期間)を設けて実行してみる
(b)事前と事後で必ず評価する(PDACサイクル)
ことが必要となる。
(6)「働き方改革」の実行手順としては
ステップ①:トップが幹部に対して宣言する(幹部は部下に対して宣言する
ステップ②:試行期間(テスト実行期間)の推進担当者を決める、モデル部署を決める、中核となるべきメンバーを決める
ステップ③:現場の声を聴く・・・働き方改革に反対するのはベテランが多く(今まで自分のやり方を変えられたく無いため)、若手に反対者は少ないことが多い
ステップ④:最初は小さなコト、誰でもできそうなコト、直ぐ実行できるコト、成果が直ぐに現れるコトから始める
ステップ⑤:管理職を含めた全員で実行する
ステップ⑥:試行期間の途中で評価し、その結果を社内で共有する
ステップ⑦:社員の意識、マネジメントがどう変わったかを検証してみる
<専門性が高い仕事をする人が注意すべき原則>
(a)社内ルールと法律は守る
(b)ムダを無くする
(c)自分しか分からない仕事や状況は創らない・・・「自分しか分からない・・」は専門性の証明ではなく組織にとってのリスクである
(d)他の従業員を残業の道連れにしない
(e)将来に投資する自分の時間を持つ
(f)「自分ひとりの人生ではない」ことを認識する
「働き方改革」の目的は、「非効率な働き方につながる文化」を変え、本当の意味で「仕事に打ち込める環境」を創ることにある。
以上