ある企業から就業規則変更のご相談がありました。
「働き方改革」が推進されている中で、就業規則変更のご相談は多いのですが、この企業の場合は、選択式401Kという新しいタイプの年金制度に加入したので就業規則を変更されたいというのが一番の目的でした。
私も選択式確定拠出年金、個人型確定拠出年金(iDeco)などの新しい年金制度が昨年末から認められたので、興味はあったものの調べる為の時間を中々創ることができず、良い機会だと考え受託することにしました。
その上で、この選択式401Kの話しをこの会社に勧めた保険会社から詳細資料を提供して頂き、不明な点は遠慮なく教えて頂きました。
この制度は良い制度なのですが、結構複雑な考え方をしています。
基本的には「基本給から会社が退職準備規程で定めた額(退職準備給付の額)だけ減額し、従業員が退職準備給付額の範囲内で選択式401Kの掛金を決め(毎月月初に掛金変更可能)、退職準備給付額から選択式401K掛金の額を引いた残金を前払選択金として毎月の賃金で支払う」という仕組みなのです。そして、選択式401Kの掛金とした額は所得税・住民税・社会保険料・雇用保険料・最低賃金の対象とならず残業代等の割増賃金計算の対象にはなる(前払退職金だけが全ての対象となる)ので話しが少々複雑になります。保険会社のセールス・トークは「社会保険料や所得税・住民税の節税となります」というものです。
色々と検討を加えた結果、「もともと賃金が低い人が選択式401Kの掛金を多額にすると、最低賃金に抵触する場合も発生するので、掛金として選択できる金額には一定の制約を付けておくことが必要である」ということが分かりました。
そして更に、この制度が「最低賃金法」「労基法による割増賃金計算に関する定め」に沿うものか否か ? 私は疑問に感じました。保険会社によると東京・渋谷労基署で合法であるとの見解を貰っているということでしたが、私が企業の臨検調査をお手伝いするのは広島中央労基署ですから、広島中央労基署の了解を得ておかないと、将来トラブルの源になる可能性があると考え、広島中央労基署に問合せをしました。しかし、広島中央労基署の見解としては「まだ本庁からこれに関する指示は出てないが、この制度と最低賃金法との関係に関しては懐疑的である。しかし、大きな保険会社が渋谷労基署で認めて貰ったというのであれば当面はそれに従っておけばよい。ただし、広島中央労基署としては具体的な問題が発生したときに対処する」という曖昧なモノでした。
敢えて私見を述べさせてもらうと、「この制度は良い制度だけども複雑過ぎるのでトラブルの源になり易い制度ではないか? 世の中は色々な人と色々な会社があるのだから"シンプル イズ ベスト"で誰にでも分かり易い制度にしなければ上手くいかないだろう」と思います。
取り敢えずは広島中央労基署に事前に打ち合わせもしたし、選択式401Kの内容も把握できたので就業規則変更の手続きを進めることにしました。