普段の私は、労働局雇用機会均等室からの情報を元にしてパワハラ防止対策を各社に推奨しています。
しかし、今日は広島県の労働委員会が主催するパワハラ防止セミナーがあるというので参加してみました。各県の労働委員会は個別労働紛争よりも労働組合との紛争解決が当初の課題でしたから、視点を変えるとどんな意見がでるか興味津々でした。
今回のセミナーで、政府が働き方改革の一環してパワハラ対策を講じようとしていることがよく分かりました。
そして、パワハラは和製英語であり、海外の企業では「企業内は他人の集まり」と考えるので単なる"いじめ"や"嫌がらせ"は暴行や名誉棄損など人権侵害でない限りは問題とされないのに対し、日本の企業では「企業社会の中における家族的な関係が成立」している為に、"いじめ"や"嫌がらせ"等も問題とされ、それらをパワハラと見做すのか否か、どこでパワハラとそうで無い行為との線引きをするのかが難しいということが良く分かりました(民事上の損害賠償が取れる違法行為だけをパワハラとするのか、それとも単なる"嫌がらせ"や"いじめ"もパワハラとするのか?ということ)。
セクハラについては、「業務上必要なセクハラは無い」から明確にし易いのに対して、パワハラは業務上の必要性が伴う場合もあるからパワハラか否かの判別基準が難しいことも良く分かりました。
そして、それ故に、パワハラ対策をセクハラ対策と同様に企業に具体的措置付けまでも義務付けるか、それとも単にガイドラインで示すに留めるべきか、その判断が難しいということが分かりました。
そして一番面白かったのは、行政担当者とコンサルタントはパワハラ定義の範囲を比較的広く("嫌がらせ"や"いじめ"もパワハラとして扱おうとしている)しようとしているのに、法律家はパワハラ定義の範囲を限定的にしようとしている点がわかったことです。
普段の私は労働局機会均等室から色々な情報を得て社労士業を営んでいますが、たまには違う世界から視点を変えた情報をえることも役に立ちそうな気がしました。
そして、パワハラに関する紛争は、労働局が主催する"あっせん"よりも、広島県労働委員会が主催する"あっせん"の方が役に立ちそうな気がしました。
そして更に、このセミナーのパネルディスカッションを通じて、「弁護士さんは発生した紛争の後始末をすることが主たる業務」であり、「特定社会保険労務士は紛争を事前に予防することが主たる業務」であることを痛感しました。