日々の業務で追われている会社が、今回の労働諸法改正に対応する為には、優先順位をつけて対応していく必要があります。そこで私なりに次のように優先順位をつけてみました(仮説です)。
その前に・・・
(A)急ぎ、かつ、重要な仕事・・・・・・誰でも直ぐに取り掛かります
(B)急ぎ、しかし、重要でない仕事・・・・得てして優先順位を高くしてしまいます
(C)急がない、しかし、重要な仕事・・・・得てして後回しにし、追い込まれます
(D)急がない、かつ、重要でない仕事・・よほどユトリがあるときに行うべきです
社内の地位が高い人ほど注意すべきは(C)です。「気にして、気にせず、自社の実態
を踏まえて、自社全体のバランスを考えながら、着実に開始していくこと」が大切
です。
論外順位(▲1)始業・終業時刻の記録をつけ管理することが法律上の義務となります。
「健康管理時間」として始業終業時刻を記録し、かつ労働時間数を管理
しなければなりません。給与計算の為だけではありません。
雇用契約上の地位にある役員さんも記録しなければなりません。
論外順位 (0) 固定残業代で100時間(80時間)超の時間数を見込んでいる会社は
固定残業代の再検討が必要です。
①訴訟(裁判)はいつ発生するか(いつ自社が被告となるか)分かりません。
②残業の実態と36協定特別条項とを勘案することが必要です。
優先順位(1) 年次有給休暇の時季指定義務への対応 (年間5日以上取得させる)
・全ての企業(法人)に平成31年4月1日から適用される法改正です。
・罰則(30万円以下の罰金)もあります。
①中途入社が多い会社(法人)は、就業規則を変更して年次有給休暇を
一斉付与方式にしなければ1年間の管理が煩雑となると思います。
②その際に、基準日(付与日)を何月何日とするか慎重に検討すること
が必要です。
③52人につき1人分の年間労働日数減少となるので、業務に支障が出
ないように仕事のやり方を変える必要があります。
優先順位(2) 長時間労働の禁止 (月80時間、2~6か月平均100時間、年間720時間)
・中小企業は2020年(平成32年)4月1日から、大企業は平成31年4月1日
から適用されます(ただし、建設業、医師、自動車運転業務他は5年間の
猶予あり)
・罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)もあります。
①企業(法人)と個人に染み込んだ仕事に対する考え方、時間に対する考え方
を変えることが必要で、これは直ぐに出来るものではありません。
②仕事のやり方・顧客との関係も変える必要が出る場合もあります。
③36協定の起算日をいつにするか?も十分に検討した方が良いと思います。
④36協定の様式も変更されます。新しい書式がいつから適用となるかご注意くだ
さい。
その為には、中小企業は助成金を利用しながら残業時間数を減し、時間をかけて
会社(従業員を含む)や業界の考え方や習慣を変えていくしかありません。
意外に思われるかもしれませんが、残業時間数を減すとき自社の従業員さん
(特に中間管理職の人達)が障害となることも多いようです。
優先順位(3) 有期雇用契約の人と正社員との格差是正 (日本版同一労働同一賃金)
・これの優先順位をどうするか? 迷う処があります。
法律は大企業は2020年(平成32年)4月1日から、中小企業は2021年(平成33
年4月1日)から適用されますが、出来るモノは前倒しで実行しておく方が
得策と考えます。
①説明責任が果たせるようにする為に、仕事の棚卸し(誰が何をしているか整理)
を行い、有期雇用契約の人(パートタイマーさん達を含む)と正社員との違い
を簡単明瞭かつ客観的に説明できるようにすることが必要です。
②皆勤手当・通勤手当・特殊作業手当ほかの手当で正社員にしか支給してない
手当が無いか、その説明ができるか、予め検討しておくことが必要です。
その為には、評価制度を再検討又は明文化することが必要になるかもしれま
せん。
優先順位(4) 月60時間超の残業の割増率変更
・大企業は既に適用されていますが、中小企業は2023年(平成35年)4月1日
から、残業時間数が月60時間超となった場合の割増率が150%以上とな
ります。
・残業や休日労働が多い中小企業は、まず優先順位(2)<長時間労働の禁止>
をクリアーして、次に月間残業時間数が60時間以下となるように業務を
改善していくしかありません。
その他に「産業医の権限強化」「フレックスタイム制の改正」「高プロ」ほかの法改正もありますが、ここでは割愛させて頂きます。
なお、この優先順位は独断を元にしています。各企業(法人)さまで事情は全て異なると考えますので、自社の現状を踏まえた優先順位をつけられると良いと考えます。ただし、各種情報に振り回されないようにすることが大切です。
そして、これらは労働諸法への対応に過ぎず、これだけでは「働き方改革」として他社と差別化(従業員定着と求人対策)できないとお考えくだされば幸いです。