何の為に賃金テーブルを創るのですか?

何事においても「目的」をある程度は明確にして、その目的が達成できるようにすることが大切だと思います。実務を行っていると、目的を達成する為の手段が目的化してしまい、当初の目的を見失ってしまっているケースがシバシバ見受けられます。

先日、ある法人の総務責任者が「賃金テーブルを創ったので見てもらいたい」と言われて来訪され、「賃金テーブル」と「各職位が果たすべき役割を記載した一覧表」とを拝見させて頂きました。

まず冒頭で私がお伺いしたことは「何の為に賃金テーブルを創られるのですか?」ということです。

法人の総務責任者は(1)「新卒募集する際に、入社後3年~4年したら賃金がどのうよになるのかを説明できるようにするため」、(2)「在籍中の従業員からも将来の自分の賃金がどのようになるのか? という質問があるので、それに答えられるようにするため」の2点ですと言われていました。

その上で、私は持参された「賃金テーブル」と「各職位が果たすべき役割を記載した一覧表」の説明を受けながら拝見させて頂きました。

そして「人事評価はどのようにされるのですか?」と私がご質問した処、総務責任者は「"各職位が果たすべき役割を記載した一覧表"を基にして評価します」と回答されました。

そして次に私が「それはとても良いことですが、評価結果をどのようして賃金テーブルに反映されるのですか?」と質問させて頂いた処、総務責任者は「社長が評価結果を見ながら、賃金テーブルにあてはめて基本給を決めます」と回答されました。

そこで思わず私は「そのやり方で当初の目的(上記(1)と(2))は達成されるのでしょうか? 御社の当初の目的を達成する為には「人事評価」の結果と「賃金テーブル」とをどのようなルールで結びつけるか(リンク化するか)が必要なのではないでしょうか? そうではなく、一番肝心な処を社長さまが決められているのでは、新卒者を含めた既存の従業員さん達に自分の将来の賃金の展望を説明できないのではないでしょうか?」と提案させて頂きました。

以上のご質問と説明をさせて頂き、折角ご来所され時間的なユトリがあるようでしたから、ご参考になれば幸いと考えて村上社会保険労務士事務所が使用している「賃金テーブル」「人事評価表」「それらを結びつけるルール」の各ひな型をプロジェクターで投影させ、「それらを結びつけるルール」も会社のお考えに合わせて柔軟に決めることができること簡単にご説明させて頂きました。

私は20歳代(40年前位)の頃から親父に言われて大阪まで賃金テーブルの作り方のセミナーに毎月参加していましたが、当時は「賃金テーブルがあること」が重要なことでした。しかし、"少子高齢化"が現実のモノになり、"求人難"が続く中で"働き方改革"が推進され、"従業員の意識"と"他社の動向"が変わりつつある状況下では「評価制度があることが重要なことであり、その結果をどのようにして賃金テーブルに反映させるかというルールが更に重要な時代」となったようです。