M&Aや世代交代による事業の承継について

先日、全国社会保険労務士会から「事業承継(M&Aを含む)」についてのWebセミナーが催されたので参加しました。そこで講師は盛んに「事業を何らかの形で承継する場合は、承継するまでのプロセスが言うまでもなく大事だが、承継した後のプロセスも非常に大切です。その為に、社会保険労務士の皆さんに是非協力してもらいたい」と言われていました。

私も過去及び現在において、親から子への承継(世代交代)、会社対会社の事業承継(譲渡、分割、吸収等による合併)等など、色々なパターンの事業承継を弁護士さん、会計士さん等とチームを組んでお手伝いしましたが、必ずと言っても良いことは、最後までお手伝いするのは社会保険労務士である私ということです。私にとって、承継するまでのプロセスも大事ですが、法的に承継手続きが完了したということは「始まりの終わりに過ぎない」ということです。そして、早期にご相談して頂ければ、それだけ円滑にプロセスを進行させることができるということです。

事業承継の際に気を付けるべきことは、成約時点まで時間との競争ですが、成約後は焦らずに時間を味方につけることが必要だと思います。事業を受け継いだ方は、どうしても「焦り」が生じ(投資に見合うモノを求めてしまう)、そこから無理が発生してしまうのでそれを防がなければなりません。

私が過去お手伝いした案件の中には、法的に吸収合併した後15年間かけて、異質であった2つの組織(会社)を1つの組織(会社)に纏められたケースもありました。「仕事のやり方」だけでなく、「考え方」や「風土」「慣習」が違う2つの組織(会社)が1つに纏まるのですから、吸収合併された組織(会社)を吸収した組織(会社)に従わせるという考え方ではなく、吸収された組織(会社)も吸収した組織(会社)も力を合わせて新しい組織(会社)を創るという考え方が必要と思います。そして、ビジネスのやり方が大きく変わりつつある昨今ですから、双方の「変えるべきコト」と「変えてはならないコト」とを再考することが必要と思います。また、時間をかけて新しい組織(会社)を創る訳ですから、労働条件の不利益変更という難問も何とか解決できています。

親から子への承継(世代交代)にしても、最短でも10年程度は必要と考えた方が良いと思っています。そして、この場合に注意すべきことは「子の焦りと傲り」ではないかと思います。親が偉大であればあるほど、この傾向は強いようです。また、親と子が事業について直接話しをするのは意外と難しいこと(言葉足らず、説明不足、感情移入等)が多いようなので、親子の間に私のような第三者が入ってそれぞれの言いたいことを仲介するのが良いようだとも思っています。

そして最後に、いずれのケースにおいても「守・破・離」を原則として事業承継を行い、留意すべき点は①「相手はモノやお金ではなく感情を持つ人間なのだ」、②「時間を味方につけることが大切なのだ」という点だと私は思っています。