精神疾患による休職は、休職を開始するときよりも終了するときの判断の方が難しい実情です。
従業員が精神疾患に罹患したときに戸惑う会社さまからご相談を頂く事がよくあります。しかし、この時には医師(=医学の専門家)から労務不能と診断されるか否かにより大半が決まってしまいます。ただし、医師は医学の専門家ですが、本人の仕事内容(具体的作業内容から本人が被る負荷の程度/業務/職責など)はご存じありませんから、その点には注意を要します。
そして、休職を開始した後は定期的に本人の状態を確認していくことが大切なのですが、意外とこれを怠る(又は、休業初期は行っていても、そのうち行わなくなる)会社さまが沢山ありますが、これは要注意です。
そして次に、休職期間中に治癒し復職できれば良いのですが、それが出来ない場合は休職期間が満了する1か月位前に、会社が本人に「休職期間満了日までに元職に復帰できる程度まで回復していなければ自然退職(又は当然退職)となること」を伝えます。
実は、その1か月前の予告を行った後で本人の病状が急に良くなることがあり、その後の主治医の診断書を鵜呑みには出来なくなることがあります。これを防ぐには、休職期間中も出来得る限り本人と定期的に面談をし、ご家族の協力も得て本人の病状の推移(と日常生活の状態)を把握しておくことが大切です。
私が精神疾患に罹患した従業員さんの休職に関するご相談を頂いた際は、10年位前から高尾式メソッドをご紹介し、それに従って対処して頂くようにしています。高尾式メソッドでは「会社は働く場であり、リハビリの場ではない」という考え方が貫かれています。そして、ご家族にも協力して貰えるよう会社に依頼しています。
しかし、精神疾患となった場合は「寛解」という状態が比較的永く続くことが多いのです。「寛解」とは「ほとんど治ったが、まだ治癒した訳ではない状態」のことを言います。その為、休職期間末期に本人の希望(復職したい)と会社の判断(元職復帰は無理等)とが食い違う場合が多々あります。しかし、高尾式メソッドの手順を踏んで忠実に実行されている会社さまでは休職期間中も会社と本人とが定期的に連絡(コミュニケーション)し会っていますから意外と混乱はおきていません。
私の体験を振り返ると、会社は他の業務で忙しいからという理由で高尾式メソッドを中途半端にしか実行されてない場合、あるいは途中でやめてしまっている場合が多々ありした。しかし、それでも最終判断を会社がするときには必ずと言って良いほどご相談されます。
その際に私は「復職の可否を決めるのはあくまでも会社であり、医師の診断書は医学の専門家の意見書であること」を伝えた上で、医師の診断書を参考にしながら会社が観た本人の状態を良く訊き、会社としてどうしたいのかを尋ね、過去の裁判例等を説明した上で、出来る限り紛争とならずソフトランディングできるように助言/助力をしていきます。しかし、裁判例でも会社の事業規模等で匙加減しているようですから、全てケース バイ ケースで対応せざるを得ないのが実情です。