某会社さまからパワハラに関するご相談がありました。
このような場合に私はいつも最初に、「会社も被害者から使用者責任を問われて訴えられる可能性があること」(従業員同士の問題だから会社は関係ないとする訳にはいかないこと)を説明したうえで、左図を提供して解決への道筋を理解して頂き、被害者(又は相談者)からの相談に真摯に対応する必要があることをご説明します。
そして、取り敢えずの措置として、加害者と被害者とが直接接触しないように何らかの理由を設けて調査期間中は一時期異動させることをお勧めします。私の過去の体験でいうと、特に中堅・中小企業では加害者にあたる人を異動させるのは業務的理由から難しいことが多いため、被害者に事情説明し同意を得た上で被害者を保護するために調査期間中は異動させざるを得ないケースが多かったように思います。
そして次に、対象となる言動が果たしてパワハラに該当するか否かを判定することが必要であることをお話しします。パワハラに該当するか否かは、
①加害者が「優越的な関係」にあったか否か("優越的な地位"とは単に会社内の上下関係だけではありません)
②加害者の言動が「業務上の必要性」に基づいたモノなのか否か?
③業務上の必要性があったとしても、その言動が業務上の必要性を踏まえて「相当(妥当)なモノ」であったのか否か(適切さを超えていなかったか)?
等を元に判定すべきであることをお伝えし、単に相談者(被害者)が不快に思った・感じただけではパワハラに該当しないこともお話しします。
その上で、左図のコンプライアンス委員会(仮名称であり調査委員会と理解すれば良いと思います)を2~3名で編成して事実調査を開始するよう会社に依頼します。しかし、大半の場合は社内のコンプライアンス委員会では被害者や加害者に適切な質問をすることが難しいので私がお手伝いすることになってしまいます。
今回のご相談で気づいたことは、昔のコマーシャルで「24時間働けますか」と宣伝することが許容されていた時代に社会人となる教育をうけた人と、「ユトリ教育」で育った人とでは仕事に対する考え方に「断絶」と言って良いほどの差があるということです。私が一番顕著に感じた違い(パワハラに発展することは稀ですが)は、上司が業務上の必要性はないけれども本人(部下)の将来のことを考えて「〇〇を勉強して、それができるようになってた方が良いよ!! 」と助言しても、本人は勤務時間中でなければ上司から勧められた○○について勉強しようとしない人がいると聞くときです。
そしてこの問題を解決する為には、お互いに相手の考え方を尊重したうえで、本人の能力向上のためには何を・どのようにすれば良いか?と第三の道を模索することが必要なのではないかと思いました。
そして更に、私の過去の体験を元に敢えて言えば、人間は感情の動物であり理性で常に感情をコントロールすることが難しいかもしれませんが、感情的な言動を行ってしまったときは必ず後でフォローすることが大切であり、またセクハラやパワハラは「この会社ならそんな問題は発生しないだろう」と思えるような会社で発生していることが多いと思います。