昇給のご相談

 賃金テーブルや評価制度の構築についての直接的なご相談ではないのですが、政府が賃上げを推進しようとし、物価高も顕著になり、他社が人手不足から大幅な昇給を行い、同一労働同一賃金の考え方が浸透しつつある状況の中で「どのようにして昇給を決めれば良いのか?」と迷われている会社さま2社からご相談がありました。

 両社とも中堅企業さまですが、今までは評価や賃金テーブルに基づく昇給という考え方ではなく、取締役会で鉛筆を舐めながら協議して毎年の賃金(昇給の有無とその額)を決められていました。当然のことですが、毎年賃金の見直しはするけれども定期昇給という考え方はされていなかったのですが、物価高の中で従業員の生活を守り、他社に従業員を引き抜かれることを防止することが目的のようでした。

 賃金テーブルや評価制度等を創り、それに基づく運用を開始するのが一番良いのですが、その構築と運用には時間が必要であり、片や目先に迫った「今年の賃金改定(昇給の有無とその額)」をどうするか?ということに両社とも考えが終始されていました。ここで注意した方が良いことは、セミナー・書籍・ネットで学んだ標準化された評価制度や賃金テーブルをそのまま自社で運用しようとしても上手くいかないということです。

 そこで私は直近3年~5年の試算表を拝見させて頂き、会社経営の安全性を確保できる労働分配率から支払可能であろう人件費額を試算し、昇給の源資が幾ら位あるのか(又は無いのか)を試算させて頂きました。

 その上で、労働新聞の記事と広島商工会議所の賃金統計に関するデータを見て頂き、全国平均値の場合はその値に約90%(業種にもよりますが)を乗じた金額が世間相場であるコトをお話しさせて頂きました。

 そして私からの助言として、基本的には「基本給は保有能力/役割/勤続年数等の本人の属人的要素(家族手当的な属人的要素は含めない)で決め、諸手当は担当する職務内容(仕事(業務)の内容と責任の程度)と発揮した能力」によって決められた方が望ましいことをお伝えし、同一労働同一賃金の考え方から有期雇用契約の従業員さん達(パートさんや嘱託さん達)の賃金も考慮する必要があることをお伝えしました。

 そして、現在の賃金の分布状態がどのようになっているかプロット図(これは私の作業)を見て頂きました。

 その結果、1社は昇給源資に比較的余裕があるので、基本給の昇給以外に物価変動手当(支給期間の期限つき)を設けることになり、他の1社は昇給源資に余りユトリが無く現在の賃金水準が世間相場よりかなり安いので基本給の昇給だけ行うことになりました。

 以上のことを踏まえて、昇給総源資を各自に配分していく訳ですが、そのときは当然のことながらPCでエクセル表を使用します。エクセル表の左右に現行の賃金台帳と昇給後の賃金台帳とを対比させ、中央に改定(昇給)額を設けて、改定額を入力すれば右側の昇給後の賃金台帳に反映されるようにエクセル表を作成しました(これは私の作業)。

 その上で、密室でプロジェクターで投影しながら主にエクセルの「非表示」「表示」機能(対比しやすくする)と「ソート(並び替え)」機能(順位を確認する)を使いながら取締役会で協議して頂きました。こうすると、各取締役の考えを数字で見える化することができ情報共有が直ちにできますので、それまでより数段早く賃金改定を決めることができました。そして、昇給源資をどのように分配するのかという協議を私は傍で聞きながら、その会社が賃金改定の検討をする際にどんなことに着目/留意されて賃金改定額を決められているのか(評価対象事項)をメモしマトメていきました。実は、これが後日に私がオマケとして提供する「人事評価表」に結びつくモノとなります。そして後日にオマケとして前記の「人事評価表」に結びつくモノを提供しました。