広島県労働局審議会は令和5年度最低賃金として970円を広島労働局長に答申したというニュースが流れていました。そして、その施行日が例年通りであれば10月1日からとなる見込みであることも報道されていました。ただし、この金額と施行日とはまだ確定したモノではありません。
しかし同時に、このニュースで広島労働局長が「業務改善助成金等を活用して中小企業等を支援していく」と発言されていたそうです。
この「業務改善助成金」について簡単に説明すると、
① (実施)計画書を予め労働局に提出し承認を得た後に、
②-1 生産性向上に役立つ機器・ソフト・コンサルティング等を購入(利用)し
かつ
②-2 事業場内(店舗・支店等)で賃金が安い人の賃金を30円以上引上げる(一番安い人の賃金を引き上げた結果として逆転する人も賃金を引き上げる)た後に、
③ 事業報告書を提出して承認を得ると、
④ 広島県の場合は、前記②-1で購入(利用)した機器・ソフト・コンサルティング等の費用の75%(特例事業b者は80%)を助成(但し、助成金額には上限(30万円~600万円)があります)して貰える。
という内容です。
この助成金で注意しなければならない点は、
(a) 購入(利用)しようとする機器・ソフト・コンサルティング等が助成金の対象となり得るか否かについては厚生労働省労働局に判定基準があること(基本的には「合見積もり」をとること、それが無理な場合はその業者を選定せざるを得なかった理由を書面に記載できるようにすること)
(b) 労働局から(実施)計画書の承認を得た後に、機器・ソフト・コンサルティング等の契約を締結すること
(c) 機器・ソフト・コンサルティング等の費用は先払いとなり、助成金は後払いとなるから、一時的に会社はその費用を立て替え払いしておくことが必要となること
等です。なお、このブログでは全て時間単価(時給)をベースにしてお話しを進めますので、月給制の人の場合は最低賃金法の対象となる賃金項目を所定労働時間数で割ることで時間単価に換算してくださるようお願い致します。
さて、広島県の場合を考えると、現在の最低賃金法により最低賃金は930円ですから、今年のその引き上げ幅の見込み額(確定はしていませんがニュースによると40円)を考え、もし現行の事業場内最低賃金が930円~940円であれば、最低賃金法施行日後はどうせ法律に従い970円以上に引き上げなければならなくなる(40円~30円の引上げ)のだから、最低賃金法施行日前(見込みとしては9月30日)までに事業場内最低賃金の従業員さんの賃金を970円に引き上げ、生産性向上に役立つ機器・ソフト・コンサルティング等を利用すれば、その費用の一部が助成金の対象となる、ということになります。
しかし、ここで考えた方が良いのは、前記したような考え(特に事業としての計画性はないが、助成金を利用したいが為に)で購入(利用)した機器・ソフト・コンサルティング等を果たして本当に会社の生産性向上に役立てることができるのかどうかという点です。
また、このような状況のときは、助成金に関する詐欺まがいの行為に注意することが必要です。
因みに、先日もある顧問契約先の社長から「村上さん!! なんか良く分からん電話が"助成金ヘルプ○○○○"という所から突然にあり、勤務間インターバルというので時間を就業規則に書いて届出すれば80万円の助成金が貰える、と言うのです。しかし、顧問社労士がいるのでそれに相談してから決めます、と言った途端に電話を切ってしまいました。一体、勤務間インターバルというのはどんな助成金なのですか?」と言われるので、私は「その助成金は、昨年タブレットPCを購入したいと社長からご相談があったときに利用しようとした助成金で、就業規則に時間を書いただけでは利用できません。①労務管理用ソフトウェアの導入・更新、②労務管理用機器の導入・更新、③労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新ほかいずれかのことを行う必要があり、しかもそれに伴い必要であった費用の75%(一定条件を満たせば80%)ですから、一律80万円という訳ではありません。また何か新しいコトをされようとするときには予め私にご相談くだされば助成金をできるように努力します。」とお話し納得して頂きましました。
また更に、数年前の出来事ですが、顧問契約先のご依頼で隣町の会社にお伺いしたときの話しですが、そこの社長さんが「ある勉強会でコンサルタントがこの計画書を提出しておけば、助成金として80万円が貰えますというので、半数以上の参加者がそのコンサルタントに計画書作成と提出とを依頼して費用を支払ったが、その後コンサルタントからは何の連絡もない。どうしたものだろうか?」という相談でした。私はその社長から当時の状況を詳しく教えてもらい、そのコンサルタントが言っていたのは"キャリアアップ助成金"であることが分かりましたので、その助成金の概要について社長に説明(特に、計画書を出すだけでは助成金はもらえないこと)し、私は会社の現状を把握していないので何とも言えないけれども社長がこの助成金を利用してみたいとお考えなのであれば手伝いますよ。」とお話しさせて頂き納得して頂きました。
以上2件が詐欺とは断定できないと思いますが、少なくとも詐欺の疑いがあると言えるのではないでしょうか? 政府が力を入れ、マスコミも報道するようになると、これに類似した話しが多発するのではないかと私は心配する処です。労働局や社会保険労務士も助成金利用を会社に推奨することはありますが、その際には必ず労働局職員(又は相談員)であるとか、社会保険労務士であるとか自らの身分を明確にする筈です。
なお、私は顧問契約先が助成金利用を希望される場合は、そのメリットとディメリットを説明し、話し合いをさせて頂いた上で、顧問契約先の為になると思われる助成金や補助金を積極的にお手伝いしますが、お金を得るためだけの助成金や会社に必要以上の制約を課す助成金はお勧めしないようにしています。