「働き方改革が必要な部署や人ほど仕事を改革しようとしない」傾向が強いと思います。
これは私の昔しの体験ですが、昔し父親が経営していた会社で在庫を減す必要があると経営コンサルタントから指摘されたことが何回もありました。そして、父親も朝礼や営業会議で「在庫を減す」方針を出したり、それをスローガンにしていました。その結果、全社の在庫は社長の指示に従い減るのですが、その内容を検討してみると、在庫を減す必要がほとんど無い部署が在庫を大幅に減し、在庫を大幅に減す必要がある部署は在庫をほとんど減していないことが度々発生していました(なお、適正在庫高は売上高と利益高とのバランスから試算していました)。在庫を減すべきなのに減していない部署の責任者に詰問すると、必ず何らかの言い訳をして従来からの自分の商売のやり方を変えようとしていませんでした。
また、昔しから社長が「火事防止をしましょう」という指示を出したら、部長は「タバコの火の後始末、ガス給油塔の火の始末等に注意しましょう。総務担当者は消火器の有効期限を確認してください」等と、より具体的な指示を出し、課長は「タバコを吸う人が退社するときは机の上に灰皿を置いたママにせず灰皿を綺麗にして返却場所に返却して退社すること、ガス給油塔の火の始末は輪番制で決めるので輪番担当者が退社前に確認すること」等と、更に具体的な指示を出さなければ、社長の指示は結局はスローガンにしかすぎず実行されないと言われています。その為、スローガンで終わらさせない為には、より具体的な指示が必要となります。
以上のことを通じて、私は「会社組織全体を動かすには"トップ"による方針又はスローガンが必要だが、それを組織内部に浸透させる為には中間管理職が各部署に応じた"具体的な対策"を講じることが必要」であることを学びました。そして、これは労災事故防止にも言えることですし、長時間労働抑制などの働き方改革やハラスメント防止にも言えることだと私は思います。そして更にトップの方針を会社組織に浸透させる為には、トップ自らが同じ方針を何度も伝え続け、従業員さん達の「耳にタコができ、そのタコがイカになるくらいに」伝え続ける必要があります。
さて、「働き方改革」は「働きかた改革」であると同時に「働かせ方改革」でもあります。そして、その目的は「1時間当たりの生産性」を従来より高いものにすることにあると私は理解しています。そうしなければ、人口が減り、かつ高齢化も急速に進行しつつある現状で会社の業績を維持することは難しくなる状況だからだと私は考えています。そのうえで、ご依頼がありました各社で「働き方改革」(今までは主に長時間労働対策が多かったのが実情)のお手伝い(伴走)をさせて頂いていますが、働き方改革が本当に必要な会社・部署・人ほど従来からの仕事のやり方・考え方に固執され、具体的な提案を行っても中々実行されようとしない傾向を私は感じ取っています。
そして、「働き方改革」を推進しようとすると、単に時間外労働の時間数を減すだけでなく「仕事のやり方や考え方」を変える必要があるのですが、そのとき本来はトップの方針にそって具体的な対策を指示すべき中間管理職の人たちが予期せぬ抵抗勢力となることがあります。それは、中間管理職の人たちからすると、自分達が今まで慣れ親しんできた仕事やり方・考え方が変えると自らの地位が脅かされる可能性があると考えてしまうからだと思います。この表面には出てこない抵抗勢力(面従腹背)は「働き方改革」推進のときだけでなく「事業再生のお手伝神い」をするときにも屡々遭遇する現象なのですが、この抵抗勢力にいかに対処していくがが成否の分かれ道となります。ただし、既に「1時間当たりの生産性」がかなり高い会社や部署や人ほど働き方改革を行いより一層「1時間当たりの生産性」を高めようとされる傾向もあります。このような部署の中間管理職の人たちは自ら率先して働き方改革を推進されるようです。
ここで留意した方が良い点は、ダーウィンの進化論で指摘されているように「環境変化に適応するものだけが生き延びることができる」ということであり、PFドラッカー翁も「企業は変化適応業である」と断言されていたように、「変えるべきモノ・コト」と「変えてはならないモノ・コト」とを峻別して、環境変化に対応すべく「変えるべきモノ・コト」は速やかに変えていく必要があるという点です。そして、更にこれに付け加えるとしたら、「失敗しようとして失敗する人間は少なく、大半の人間は過去の自分の成功体験で失敗する」ということです。そして、これに対処するには「大きな時代の流れ(トレンド)を掴み、目の前で真さに発生している事実を思い込みによらず直視し、自分達がやろうとしていることの目的を達成する為に、出来る限り多くの人を巻き込んで最適な方法をその都度立案し、実行しながら変更・修正していくこと」しかないのではないかと私は考え、日々顧問契約先と共に伴走させて頂いています。