働き方改革が進展し、リ・スキリングが大切と言われる中で、従業員さん達を「評価」し「認める」ことが企業規模にかかわらず非常に大切なことになっています。一方、市場の顧客が激変を続ける中で上司が部下とコミュニケーションする機会が減っています。そこで上司と部下がコミュニケーションする手段の一つとして簡易な選択式の「評価項目リスト(現場向け)」を作成しました。この「評価項目リスト(現場向け)」を使用し、上司と部下が年に1回~2回程度は面談してコミュニケーションを図ってはどうでしょうか? この「評価項目リスト(現場向け)」を利用すれば、短時間で評価項目を選定することができます。
人間は自分のコトが一番分からないものです。従業員自身は「普通のコトだ」と思っていても上司や会社にとっては「望ましくないコト」、従業員自身は「今のレベルで十分だ」と考えているコトでも上司や会社からすれば「会社や上司の期待水準にまだ到達していない」と判断していることもあります。その為、上司等に自分の言動やレベルを評価してもらうことで、自分の言動やレベルが会社や上司にどのように受け止められているかを知り、また伝える必要があるのではないでしょうか?
今まで、私は20人~40人規模ならば評価制度など設けなくても日頃のコミュニケーションでそれを補えるものと考えていましたが、飲みにケーションの機会が減り、メールやチャットなどネットを利用したコミュニケーションが増え、また業務ソフトが普及したり作業のロボット化が進展し個人の作業が増えた昨今では対面でコミュニケーションする機会が減り、自分の発した言葉や行動が相手に自分が意図した通りに理解されないケースが増えているようです。因みに、「メラビアンの法則」によるとコミュニケーションは「話しの内容」よりも「声の質・トーン」「見た目や動作・しぐさ」で相手の理解が違うと言いますが、メールやチャット等では「話しの内容」(伝達)しか伝わらないのではないでしょうか?
従来は評価制度を採用していなかった会社が私に新たに評価制度のご相談をされたとき、今まで私は既成の評価項目を押し付けるのではなく企業文化や業種・業態等を踏まえた会社独自の評価項目リストを作成できるように「その会社の社長(又は実権者)の頭の中には無意識(暗黙知)のうちに評価基準があるから従業員各自の給与等を決めることができている」と考え、その社長(又は実権者)の頭の中にある評価基準を明文化(形式知)することに時間と労力とを費やしていました。しかし、このやり方だと評価項目を形式知にするのにかなりの時間と労力とが必要となっていました。今後も従来のやり方は継続する予定ですが、この時間と労力とを軽減するため簡易な選択式の「評価項目リスト(現場向け)」を作成してみました。これを用いることで暗黙知を手際よく形式知にすることができるようになるのではないかと思います。
また、「正しい評価制度を創ろうとすることが大切なのではなく、評価制度があるコトが大切なのだ」という名言と「会社は変化に対応し変化しているから評価項目もそれに合わせて変えていく方が良い」という考え方を元に、「無」から正しい評価制度を創ろうとするのではなく、この簡易版選択式評価リスト(現場向け)から始めて経年と共に評価制度をブラシュアップしていけば良いのではないかとも考えています。
そして留意した方が良いのは「評価するコト」と「給与等を決めるコト」とは異なることであり、「部下に序列をつける為に評価制度を設けるのではなく、部下を育成する為に部下を評価する」と従来とは異なる発想をしてみてはどうでしょうか? 。このような発想をすると評価時に必要なことだと言わる部下との面談が行い易くなるのではないでしょうか? 評価項目は会社の期待値を従業員に伝える手段であり、必ずしも給与等を決める手段ではないと私は考えます。ご希望される場合は賃金テーブル等を作成して評価結果をそれに反映させるルールを作成しますが、私の顧問先でも人事評価はしているが、その結果は給与等を決める際の参考にする程度に止め直接的には反映させない会社があり、そこでは会社運営が極めて上手くいっています。大切なことは「人間は他人に"認められるコト"を好み、"軽んじられたり・無視されたりするコト"を忌避する」傾向があり、それは必ずしも給与等という金銭的なモノである必要は無いということです。みんなの前で「褒める」「賞状や感謝状等を手渡す」など金銭的ないコトでも良いと私は実務で体験しています。
因みに、評価項目リスト(現場向け)は以下の項目で構成しています。
≪ 評価項目の構成 ≫
< 1 > 会社方針・規則・ルール等の遵守 ( 共通 )
< 2 > その従業員のスキル評価 ( 共通 )
< 3 > 行動評価
3-1. 個人としての行動評価 ( 選択 )
3-2. 仕事のやり方の評価 ( 選択 )
3-3. 組織人としての行動(チームワーク・協働)評価 ( 選択 )
< 4 > 業績の評価 (目標が定められている場合のみ)
( 留意点-1 ) 評価するときに注意した方が良い点は、その従業員の「性格 (資質・人格)」ではなくと「行動(発言を含む)」と「スキル(技能)」を評価することだと考えます。
( 留意点-2 )<3>行動評価は選択式にしていますが、余り欲張った項目数にすると評価するのが大変な作業となってしまいますから、<3>行動評価の全部で最大7~8項目程度に止めた方が良いと考えます。
( 留意点-3 ) 面談するときは人間の本性を考え「その人の良い点を3点指摘し、その後で改善して貰いたい点を1点指摘する」ことが大切と考えます(欠点指摘型ではなく長所伸長型コミュニケーション)。