それってパワハラ ?

 従業員が「適応障害のため1か月間の療養を要す」と診断された会社があります。この会社の就業規則では休職に関する条文で「"私傷病による欠勤が継続して30日を超える場合"は休職制度を利用することができる」と定めてありますので、取り敢えず該当者の病気欠勤を認めることにしました。

 しかし、その部署には同じ診断をされ約6か月前から休職している従業員が1人いますから、これで2人目です。

 その為、会社としては、パワーハラスメントの疑いがあるので調査を開始しました。最初の従業員が病気欠勤を開始した際にもパワハラの疑いがあったので、会社は独自で調査し本人・同僚・上司等から事情聴取したのですが「誰が」「いつ」「どんなときに」「どんなことをしたのか又は言ったのか」等が特定できませんでした。

 今回の従業員さんに「パワハラがあった」と申出するか確認した処、その考えは無いということでした。しかし、「適応障害のため療養を要す」と診断されたことは動かし難い事実であり、今回で同じ部署から2人目が発生しているので、会社としては職場環境配慮義務違反とならないよう原因を究明する必要がありました。その為、私に相談された次第です。

 私が会社に助言しながら調査を進めていくと、パワハラと明確に判断される言動は見つかりませんでしたが、特定の同僚(先輩)の言動が原因であるようだということが分かってきました。その為、会社はその同僚(先輩)と面談をし、パワハラ防止の為の教育・指導をすることにしたのですが、その同僚(先輩)は教育・指導の内容を理解しようとせず「そんなら辞めます」と辞意を伝えてきました。会社としては2人が休職又は病気欠勤している状況なので、その同僚(先輩)に辞められては困るのですが第三の被害者を出す訳にはいけないので、その辞意を受理することにしました。

 なお、数日後に、約6か月前から休職している従業員が傷病手当金支給申請の書類を会社に持参したので、「○○さん(前記の同僚(先輩))が辞めることになりました」と伝えた処、「○○さんが出社しなくなるのであれば、医師とも相談の上で、早急に復職するようにします」との回答があり、会社はなんとかその部署の業務を継続させることができそうなので一安心したそうです。