建設業 36協定

 建設業の36協定の書き方に関するご質問がありましたのでブログにさせて頂きました。

 建設業には元請け/下請け/孫下請け等がありますが、労働保険の年度更新とは異なり、36協定を作成する際に大切なことは労働時間他の労務管理等をどこで行っているか?です。

注意点(Ⅰ)は、以下①~⑤を参考にして「どの現場の36協定は本社事務所とは別に36協定を届出する必要があるのか?」を判断する必要があります(注意点(Ⅰ)は出雲労基署のパンフレットから引用しています)。

≪36協定の届出が不要な場合≫

① 現場内に現場事務所を設けず、又は、労務管理等を含む管理責任者を常駐させない建設現場、

② 本社などの別拠点の在籍者が、その現場に短期間(1週間程度等)の出張作業として入場する建設現場、

(③ 一人親方として入場する場合又は個人事業主のみを使用する建設現場)

は、その現場の36協定を提出する必要はなく、本社事務所等でマトメて36協定を作成します。

≪36協定の届出が必要な場合≫

④ 建設現場に現場事務所を設けて、労務管理を含めた管理責任者常駐の下で労働者を使用する建設現場

⑤その建設現場が労働者を使用する唯一の現場であり、ほかに上位組織に該当する拠点(本社事務所等)が無い建設現場(=建設現場しか無い場合)

 

注意点(Ⅱ)は、届出様式に種類がありますから届出様式を選択しましょう。各様式は厚生労働省の「主要様式ダウンロードコーナー」からダウンロードできます。「様式9号の2と様式9号」(一般企業と同じ)と「様式9号の3の3と様式9号の3の2」(建設業専用)とは少し離れた箇所にアップロードされています。

(A) 様式9号の3の3・・・時間外労働が1か月で45時間(1年変形の場合は42時間)を超えるコトがあり、特別条項として災害時の復旧/復興に従事する場合を想定して届出する必要があるときに使用

(B) 様式9号の2・・・時間外労働が1か月で45時間(1年変形の場合は42時間)を超えるコトがあるが、特別条項に災害時の復旧/復興に従事する場合を想定せずに届出するときに使用

(C) 様式9号の3の2・・・時間外労働が1か月で45時間(1年単位の変形労働時間制の場合は42時間)を超えるコトは無いが、災害時の復旧/復興に従事する場合を想定して届出する必要があるときに使用

(D) 様式9号・・・時間外労働が1か月で45時間(1年単位の変形労働時間制の場合は42時間)を超えるコトがなく、特別条項に災害時の復旧/復興に従事する場合を想定せずに届出するときに使用

 

注意点(Ⅲ)は、記載時に厚労省パンフレットにはないか、又は見落とし易い注意点です。

① 各様式の右上の「労働保険番号」は、「本社事務所」として建設現場の従業員も含めて提出するのか? 「建設現場」として単独で提出するのか?  労働保険番号を間違えないようにしましょう。

日付を記入する欄が、通常の36協定(1枚目)の右上に2か所「協定の有効期間」「起算日(年月日)」、特別条項(2枚目)の右上に1か所「起算日(年月日)」ありますから漏れなく記入してください。

特別条項に「②災害時における復旧及び復興に従事する場合」を記入する欄がある様式(様式9号の3の3)を使用する場合でも、「①工作物の建設の事業に従事する場合」の「1箇月」の「延長することができる時間数及び休日労働の時間数」の欄は必ず「100時間未満の時間数を記入してください(下段の「復旧及び復興」に関する時間数とは違い100時間以上の時間数を記入すると法違反となります)。

④ 通常の36協定(1枚目)と特別条項とにより時間外労働と休日労働とをさせることが出来る事由を記入する欄は、通常の36協定(1枚目)と特別条項とで違う内容(事由)を記入することが必要です。ここに記載して無い事由では時間外労働等をさせるこどかできなくなりますから、この事由は出来るだけ幅広く各業務を記載しておく方が良いと思います。

チェックボックス(最大4か所)は、内容を確認して必ず全てにチェックできるようにしましょう。

 

注意点(Ⅳ)は、労働組合が無い場合の従業員代表の選出方法は、労働基準監督署の指導/調査等が後日にあったときに選出方法が示せる手段(投票用紙の保存、選出同意書の回覧保存、Webによる記録等)にしましょう。この選出方法が適正でない場合は、仮に36協定の届出をしていたとしても、その36協定が無効と判断されるリスクがあります。

 

最後の注意点(Ⅴ)は、届出した後の管理上の注意点ですが、36協定の届出をしても実務上での管理/確認、必要に応じて従業員を指導することが大切です。業務ソフトで管理データの作成を容易にしても、最後は人間が管理・確認しなければ管理データは単なる数値の記録に過ぎなくなります。

①「月60時間超」の時間外労働を行った従業員が発生したら、年間720時間の上限に抵触する可能性がありますので、その後の時間外労働時間数の管理は注意してください。

②「月80時間超」の時間外労働を行った従業員が発生したら、その後は時間外労働と(法定)休日労働の合計時間数を管理してください(2~6か月平均で1か月80時間以内の上限に抵触する可能性があります)

③ 特別条項を提出したとしても、月45時間(1年単位の変形労働時間制の場合は42時間)を超えることができるのは年間6回までですから、月45時間を超えて時間外労働をする従業員が発生する場合は回数を管理しましょう。