「コロナ ゼロゼロ融資」を利用していた会社から「廃業することに決めた」というご連絡がありました。この会社との顧問契約は無く、自社では処理できない手続きを1年に1~2度程度依頼されていた会社なので私も会社内情を把握していませんでした。
このような連絡があった場合、通常の私であれば事業再生のご相談を始めますが、この会社は既に税理士と打合せを繰り返した上で判断された訳であり、社長は「もう会社を継続させることは無理だ!! 」と決断され、従業員さん達にもその旨を話されていました。その為、残念なコトですが私は事業再生の対応はせず従業員さん達を出来る限りトラブルなく退職してもらう手続きに専念することにしました。
日本企業の特徴として、事業再生の相談の際に多いのは(社外に会社内情を知られるコトは拙いと考え)ギリギリまで自分達だけで何とかしようと努力し、どうしようも無くなってから相談に来られる場合が多いことが挙げられます。しかし、このようなタイミングでのご相談は、企業体力を殆ど消耗し尽くしていることが多く、講じることが出来る対策がほとんど無いことが多々あります。その為、会社経営に変調が発生したら速やかに社外の専門家に相談されることをお勧めします。病気でも早期に通院して医師に相談すると比較的早く回復しますが、重度状態になってから通院すると医師も治療が難しく回復に時間がかかったり、最悪の場合には治療できない状態となることがあります。定期的に専門家(医師)の健康診断を受けるか、変調に気づいたら速やかに専門家(医師)に相談することが大切です。
そして、これは私自身の体験ですが、会社が倒産の危機に瀕し事業を再生させようとするならば「汗をかき、恥をかき、義理を欠かなければ事業の再生はできない」と言われています。事業を再生することを諦めてしまっては汗・恥・義理を欠くことから逃避してしまいます。
この会社の社長は「コロナ ゼロゼロ融資」の「借換制度」のことも税理士から聞かれていましたが、コロナ緊急事態が解除された後も業績は一向に改善せず低迷したママであり、仮に借り換えしたとしても今後返済できる見込みがないと判断され廃業しようと決断されたようです。
別件ですが、コロナ後遺症から立ち直れず大手企業に吸収された企業がありました。また更に別件ですが、コロナ緊急事態が発生した直後に雇用調整助成金の手続依頼をされた会社さまから私は過去の決算内容を教えて頂き、既に銀行からリスケ支援を受けていることが分かり、また業績を回復させる手立ても無い状況であることか分かりましたので、社長が希望されるのであれば雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金の手続きを代行するけれども、そんな延命措置をしても傷口(借金)を大きくするだけだから廃業/売却することも視野に入れた方が良いと提案したこともありました。そして数年後に噂で聞いた処によるとこの会社は売却されたとのことでした。
一方では、相談されたり私が気づいたタイミングが早かった為、事業を再生させることができた企業さまや、事業規模を大幅に縮小したり業種転換して先代から引き継いだ会社屋号だけは残すことが出来たケースもありました。
コロナ最中に企業経営を継続させることは極めて難しかったと思いますが、コロナ後には原材料費を含む諸物価が急騰し、消費者の生活防衛に対する意識が高まった結果として生活習慣が変わり、コロナ緊急事態が終焉したからといって生活習慣(購買習慣)はコロナ前の状態には戻りません。そして事業を再び軌道に載せようとすると想像以上の資金と労力とが必要になるものです。このような場合にご依頼があれば、私は「私が過去に体験した倒産後の辛い思いはさせたくない」との考えから、会社の人達と私が一緒になって会社を存続/維持/発展させることができる方策を検討/実行していくようにしています。
P.F.ドラッカー翁も「企業は変化適応業である」は言われていますが、企業の存続・維持・発展を期するならば過去の実績/方法/考え方に捕らわれず変化に適応していくこと、視野を広げるために社外の専門家を活用することが大切だと考えます。
そして、このことは令和6年4月1日から労基法の残業時間数上限規制の対象となる「建設業」「運輸業」「医療業界」でも同様のことが言えるのではないかと私は思います。過去から自社に染着いていた「バイアス」から抜け出すことは自社だけでは難しいのです。