労働保険の納付と成立届

 顧問契約先の労働保険料申告は6月中に全て終了していましたが、7月10日直前になって飲食店から突然のご依頼がありました。忙しくて自社では出来ないから私に依頼したいという趣旨でした。

 来所された会社の人にその会社の実態をお尋ねした処、

①飲食店を5店舗運営し、それぞれの店舗にはパート・アルバイトを含めると10名~20名の従業員がいること、

②飲食店とは違う場所に食材を加工する事業場(セントラルキッチン)を昨年10月から設けパート従業員が5~6名いること

③本部に相当する事務所を今年5月から店舗とは別な場所に設け、そこにパート従業員が2名いること

などが分かりました。その上で会社が持参された労働保険年度更新申告書を拝見すると、開業当初に届出した労働保険番号の申告書しかありませんでした。

その為、

(a)飲食店5店舗のうち1店舗は届出してあるが残りの4店舗は労働保険未加入の状態だから、労働保険の保険関係成立届を提出しないと仮に5店舗分の保険料をマトメて支払っていても、残り4店舗は労働保険未加入の状態となっていること。このまま放置し、未届けの店舗で労災事故が発生すると保険料以外に追徴金を課せられる場合もあり得ること

(b)ただし、労働保険の保険関係成立届を提出するだけだと労働保険料申告書を店舗ごとに作成することになるから、それらを纏める為に継続事業一括認可申請書の届出をする必要があること

(c)セントラルキッチンと本部とは労働保険未加入の状態だから、速やかに遡って設置届を提出した後に今年の労働保険料の申告手続きを行う必要があること

(d)店舗5店舗は業種が同じだから継続事業として一括できるが、セントラルキッチンと本部は業種が異なるから一括できず、そのため労働保険申告書が3枚になること

(f)全ての労働保険年度更新申告書の送付先を本部所在地にしておいた方が良いこと

(g)労働保険申告とは別にハローワークに雇用保険非該当承認申請の手続きをする必要もあること

をお伝えした処、費用の件を含めて社長と相談して来ますと言われました。

 会社の人は「既に労働保険の事業場を1か所届出しているから、そこの申告書で飲食店5店舗、セントラルキッチン、本部の全ての労働保険料を納付しておけば良いのかと思っていました。」と言われていましたが、これは良くある間違いです。