未払賃金の請求 と 紛争化防止

 3か月位前に退職した社員から過去約2年間分の未払賃金の請求をされた会社さまがご相談に来られました。

 早速、タイムカード、賃金台帳と就業規則をお預かりして私が集計した処、この会社は変形労働時間制も固定残業代制も採用されてなく確かに未払賃金があることが分かりました。

 この会社では普段タイムカード集計は労務管理ソフトで行っているとのことでしたが、初期設定に不備があったり、労務管理ソフトでは対応しきれない働き方を従業員がしていたようです。

 未払賃金が発生していた主な原因は、

①日々の労働時間数全てを15分単位で切捨処理していたこと

②週や月を跨いだ振替休日の処理が間違っていたこと

③半日(4時間)の年次有給休暇を取得している日に5~6時間働いていたので法内残業が発生していたこと

によるもので、深夜労働割増賃金は正しく支払われていました。

①日々の労働時間の切捨処理は昭和63年3月14日付基発150号で禁止されていること

②振替休日は同じ週の中で振替える場合は問題が無いのですが、週や月を跨ぐ振替休日にすると働いた日が属する週の労働時間数が法定の週40時間を超えることになるので、超えた時間数が時間外労働となり割増賃金の支払いが必要になること

③半日年休(4時間4時間)を取得した日に5~6時間働くと1~2時間が法内残業となるので通常の賃金(割増なし)を追加で支払うことが必要となること

 以上を説明したうえで、本人が既に労基署や弁護士等の専門家に相談している場合も想定されるので、タイムカード集計表と就業規則を同封して「未払賃金を早急に支払う意思があること」を郵便等で伝えるよう会社にお勧めし、その文面と和解合意書のひな型をお渡ししました。そして、今後の為には1か月単位の変形労働時間制を導入されることもお勧めしました。

 このようなケースは昭和の時代に創業され、労務管理ソフトを過信されている30人~50人規模の会社で一番多い事例なのですが、昭和➡平成➡令和と移るにつれ労働関係緒法令の改正とその運用が厳しくなり、従業員の法的知識が深まったにも関わらず、昔ながらの労務管理方法でタイムカード集計をそのママ継続し続け、気づいたら法違反となっていたケースのようです。