働き方改革 の 部分最適 と 全体最適

 いくつかの会社の働き方改革をお手伝いして生産性を高める為の「働き方改革」が部分最適に終わってないのか?と思います。ロボットを導入する、高性能な機械を購入する、労務管理ソフトを導入する等、いろいろなやり方で生産性を高め働き方改革を推進されようとしています。しかし、それだけで会社全体の生産性(全体最適)は高まるのでしょうか? 特定の部門や特定の人の生産性が高くなっても他の部門や人がボトルネックとなり会社全体の生産性が改善されないということは無いでしょうか? それらを導入する前にもっとやるべきコトがあるのではないでしょうか? 「働き方改革」が残業時間削減から始まった為か、その推進は個人や部分(部署)の仕事のやり方を改革することに主眼がおかれ、全体を改革することを忘れているケースが散見されるように思います。

 今から約35年位前の古い話しですが、オフコンに代わってパソコンが徐々に普及したタイミングでPCソフトが市販されるようになりました。会計ソフト、販売管理ソフト、在庫管理ソフト、発注管理ソフト、給与計算ソフト他いろいろなソフトが販売されるようになり、それらのソフトが急速に普及しました。そして個別業務は従来よりも早く楽に処理されるようになったのですが、会社全体の生産性向上には中々結びつきませんでした。

 そしてそれから10年位経ってからの笑い話のような実話ですが、ある酒造メーカーの経理処理手順をお聴きしてみると、振替伝票を起票して勘定元帳に記載し、その後に時代劇に出てくるような大福帳に筆で漢数字で記載されていました。私は現場に「何の目的で勘定元帳に記載している数字を大福帳に筆で漢数字で記載しているのか」を尋ねた処、現場の担当者も部長も「業務を引き継いたときに引き継いだからそれを続けています」と言われました。そこで私が「大福帳のような勘定元帳は誰が見ているのですか?」と尋ねた処、「よく分からないけど社長ではないでしょうか?」「倉庫でかなりの量が溜まり困っています」ということでした。そして私が社長に会計ソフトを購入することをお勧めすると同時に「大福帳のような勘定元帳は毎月見ているのですか?」と尋ねた処、社長は「毎月提出されてくるが、そんなものは見ずに社長印だけ押している。漢数字は読めない」ということでした。その為、私は直ちに社長に「大福帳に勘定元帳を転記するのを止める指示を出すこと」を依頼しました。私としては会計ソフトを導入したのだから振替伝票と勘定元帳とを手書きするのも止めて貰いたかったのですが、ベテランの経理担当者が頑として応じなかったのでそれは断念しました。しかし、会計ソフトを導入したことにより経理・総務の業務で人手が余るようになったので、会社で協議してお酒を瓶に詰める作業に交代で応援しに行ってもらうコトになりました。

 その当時のことを思い起こすと、大枚をはたいてロボットや新しい機械やソフトを購入する前に会社全体の業務の流れを再検討(B.P.R)し、それぞれの業務の目的を明確にして社内にある「ムダ・ムラ・ムリ」や「思い込み」を無くし、目的が明確でなく何となく慣習として行っていることを無くするコトが必要ではないかと私は考えます。そして、そのとき一番必要なことは「その業務(作業)を止める勇気をもつことではないかと思います。PFドラッカー翁も「その仕事を今からでも始める考えはあるのか?と自問自答することが必要」と言われていました。

 そして、この全体最適を図る作業は同じ会社内にいる人達だけでは中々難しいのです。何故なら、同じ会社にいて既にその業務や作業を行っている人達は、その業務や作業に慣れているコト、異業種他社のやり方に関する情報に疎いコトにより、無意識のうちに「当たり前のコト」と考えて「変えるべきコトを見落としてしまうコト」が多いからです。その為、社外の人にアドバイスしてもらうコトが必要となりがちです。

 私と一緒に社内業務を見直して見ませんか?